北風アウトサイダー メイン

本日2月11日(金)シネマート新宿での公開を皮切りに、全国ロードショーが始まった『北風アウトサイダー』。

監督・脚本・主演を務める崔哲浩は、俳優だけでなく映画監督の入江悠と設立した【劇団野良犬弾】ではプロデュース、演出も務めている。
映画『北風アウトサイダー』は、自身の半生を基にしているという。

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『北風アウトサイダー』ストーリー

多くの在日朝鮮人が暮らす、大阪市生野区。

食堂を営んでいたオモニ(永田もえ)は、この地に住む在日コリアンに慕われていた。
葬儀には、実子である兄妹キム・チョロ(​伊藤航)、ガンホ(上田和光)、ミョンヒ(​櫂作真帆)だけでなく、親族や店の従業員、常連も参列していた。

だが、とうとう長男であるヨンギは顔を出さなかった。
ヨンギは、15年前に愛娘であるナミ(​秋宮はるか)を置いて失踪したままなのだ。

​オモニは多額の負債を遺しており、返済を迫られるチョロ、ミョンヒは頭を抱える。
そんなある夜、オモニの店に「3万でいいから」と無心する男が現れる。
男が変わり果てた姿のヨンギ(崔哲浩)であることに気付き、ガンホは驚愕する――。

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崔哲浩は言わずもがな、永田もえ、​伊藤航、櫂作真帆、そして田中あいみ、​福本翔、​玉木惣一郎ら、劇団野良犬弾でお馴染みの俳優陣が顔を揃えているが、定期公演の映画版という訳ではない。
崔監督は、映画として世に送り出さんとして、この物語を創ったのだ。

『北風アウトサイダー』は、在日コリア街で暮らす人々の生活を、丁寧に、リアルに、何より凄まじい熱量で活写した群像劇。
ほぼすべての登場人物が、偏見や貧困に苦しめられているが、シリアスな場面だけでなく、コミカルな演出も随所に見られ、それがかえってリアリティを引き出している。

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崔哲浩、上田和光、永田もえ、この3人は、初登場とドラマ終盤では大きく印象を変える難役に挑んでいる。
是非とも、演技の振り幅を堪能してほしい。
(実は豹変する登場人物がもう一人いるのだが、物語の核心を衝くネタバレになりかねないので、割愛する)

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対して、伊藤航、櫂作真帆は、怒涛の展開を見せる物語に翻弄される、ドラマの謂わば「受け手」を担う。
ミョンヒとチョロ、映画の良心とでも呼びたい兄妹二人に観る者の共感は集まるので、首尾一貫したぶれない演技に注目を。
また、秋宮はるかの好演も、共感を呼ぶに違いない。

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佐野いずみ、​新宮里奈、浦川奈津子、田中あいみ、​千賀多賀乃、​黒田焦子、藤代麻美……
オモニ食堂に集う女性たちは、共に悩み、足掻きながらも、強く躍動する。

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遠藤綱幸、梅津翔、​福本翔、​玉木惣一郎、​​松田俊大、杉浦豪……
対して男たちは、己の力の無さを呪うかのように、徒党を組む。

1カット1カット丁寧に作り込まれたフレームワーク、カメラワークの密度が凄まじい。
手前の人物の表情にばかり気を取られていると、奥で展開されている細やかな所作を観逃す羽目になる場面が、いくつも繰り返される。

画面密度を上げることは、崔監督が『北風アウトサイダー』を映画作品にしたかった大きな動機の一つであることは間違いない。
画的な情報量を密にすることは、直接的に言語理解の重要性に直結する。
これにより、「民族」「血脈」という大きな作品テーマが浮かび上がってくる。

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そんな丁寧な撮影現場を、ベテラン陣が意気に感じないはずはないだろう。
永倉大輔、​松浦健城、並樹史朗、​岡崎二朗、そして、竜崎祐優識……
圧倒的な存在感で、スクリーンを引き締める。

『北風アウトサイダー』には、モブキャストというものが存在しない。
銀幕に映るすべての者には、一つ一つの人生が宿っている。

映画ではキム家の人々に回想シーンが用意されているが、大小に拘わらずすべての登場人物に繊細な演出が付けられており、過去の出来事や為人(ひととなり)が垣間見えるかのようだ。
『北風アウトサイダー』は、重厚な人間ドラマであり、大いなる人間讃歌なのだ。

そして、単なる人情ドラマでは終わらない。
日本社会で今なお蔓延る、差別や偏見、異文化ヘイト、貧困、そして非合法組織による自治。
さらには、民族主義的圧力団体の暗躍までもテーマとして内包する。
『北風アウトサイダー』は、社会派映画としての一面もあるのだ。

「朝鮮人も日本人も、みな人間や。だから、仲良くできる時代が必ず来る」
永田もえの台詞は、映画でいちばん大きなメッセージだろう。

だが、周囲から慕われたオモニも、聖母ではない。
日々悩み、躓き、癇癪をおこして家族を傷つける。

映画そのものも一筋縄では行かず、安易な幕切れは用意されていない。
物語は、「破滅的なハッピーエンド」へと突き進む。
否、「未来志向のバッドエンド」なのだろうか。

そもそも、終劇ですらないのかもしれない。
この矛盾の、不条理の、愚かさの、愛おしさの……
結末を着けるべきなのは、私たちが生きる現実世界なのだから。

「知らん者同士が仲良ぅなるって、そんなんとちゃう?」

崔哲浩監督の声が、聞こえた気がした――。

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映画『北風アウトサイダー』

2022年2月11日(金 祝)〜シネマート新宿
2022年2月25日(金)〜  名演小劇場
ほか全国順次ロードショー


崔哲浩 櫂作真帆 伊藤航 上田和光
 
浦川奈津子 遠藤綱幸 佐野いずみ 新宮里奈 梅津翔

田中あいみ 秋宮はるか 千賀多佳乃 福本翔 玉木惣一郎

松田俊大 杉浦豪 大原広基 黒田焦子 藤代麻美 永田もえ
 
永倉大輔 松浦健城 竜崎祐優識 並樹史朗 岡崎二朗
 
脚本・監督・プロデューサー:崔哲浩

プロデューサー:伊藤航
ラインプロデューサー:ぬくいえり
撮影監督:貫井 勇志

​撮影:田村 雄介 / 大西 健之
録音:丹 雄二 / 成田 章太郎

助監督:上田 和光
制作:田中 あいみ / 秋宮 はるか
編集:松原 雅人

音楽:Les.R yuka / 野島健太郎 主題歌:「あなたへ〜北風に乗せて〜」Les.R yuka

制作:ワールドムービーアソシエーション
配給:渋谷プロダクション

©︎2021ワールドムービーアソシエーション

『北風アウトサイダー』公式サイト

https://www.kitakaze-movie.com/