さて、この御朱印はどちらで拝受したでしょう?
なんとも素敵な墨書きの筆使いに、目を奪われる。
こちらは、母の日の限定御朱印。
書だけでなく、御印も何とも魅惑的だ。
そして、こちらは父の日限定。
ちなみに、すべて直書きである。
ここまで特徴的で魅力的な御朱印はそうそう無いので、拝受されたことのある方は、もうお分かりだろう。
とは言え、相当な「御朱印通(つう)」であることは間違いない。
ここは、名古屋市中区大須3-4-13に鎮座する、【錦鯱神社】(きんしゃちじんじゃ)。
昨年(2020年)錦3(名古屋市中区錦3丁目)に開社、今月(2021年7月)大須に移ったばかりの、「名古屋で一番新しい神社」だ。
拝殿には、神社のシンボル「錦姫」が手にする大煙管(きせる)が祀られている。
「竹製で、実際に使えるんですよ」
錦鯱神社を切り盛りする「錦鯱さん」は、気さくに色々なことを教えてくれる。
ノーマルな筆書き御朱印だけでも、これだけの種類が!
御朱印を拝受すると頂ける、解説入りの挟み紙も要チェック。
境内には、本格的に書を学んだ錦鯱さんならではの手作りPOPが置かれている。
加えて、錦鯱さんは歴史好きでもある。
神社の境内は、おもてなしの心遣いで溢れている。
そして、もう一つ。
何よりのおもてなしの心は、錦鯱さんのサービス精神だ。
先日誕生日を迎えたとお伝えしたところ、即興で「おめでとう御朱印」に仕上げてくれた。
錦鯱さんがサービス精神に溢れているのは、夜の街で働いた経験の為せる技なのかもしれない。
境内の壁ところ狭しと飾られたパネルを眺めつつ、お話を伺った。
「錦鯱神社は、「普通の神社とは違うね」と、よく言われます。
ここを始めたのは去年ですが、去年に限らず、夜の街では人知れず亡くなる方が、表には出ないだけで凄く多いんです。
僕も夜の仕事をしている頃、警察の人が部屋を訪ねてくることもありました。亡くなった女の子の事情聴取とか、「ここを張り込みに使わせてほしい」だとか……錦ならではですね(笑)。
そんな風に消えていく命があまりにも多かったので、僕は可哀想と思っていたんです。ニュースにも取り沙汰されないし、誰も知らないし……前から不憫に思っていたんですよね」
「その上、コロナで何もかも夜の世界が潰されてしまって。たまたま僕は書を学んでいたし、絵も習っていたので、そういうのを吐き出したら、広めてくれる人たちがいらっしゃったんです。
自分としては分からなかったんですけど、「字が良いね」って褒めてくれる方がいたり。もともと僕は夜をやっていたので、こうしてることは不思議な感覚です(笑)。
こんなこというのは烏滸がましいんですけど、皆さんが期待してくれることは、僕も凄く楽しいですね。
ここは夜の街の神社なので、うるさい決まり事はないですから、「次はどんな絵を描くの?」とか気軽に聞いてほしいですね。喜んでもらうのが、一番なので」
こちらは、【アートサロン絵画大賞展】出品作。
『伍尾錦姫遊戯』として、限定御朱印になっている。
『花魁シリーズ』など一部の書き置きを除き、錦鯱神社では御朱印を直書きしていただくことが出来る。
もちろん時間が掛かるので、御朱印帳をお預けした上で郵送対応してもらう参拝者も多いが、もし境内で待てる機会があるのなら錦鯱さんと話してみると良い。
なんと、これらも直書きなのだ!
『妖怪絵巻シリーズ』は、夜の街に因んだモチーフなのだそうで、詳細は錦鯱さんに直接聞いてみると良い。
こちらの『咆哮!』は、錦鯱神社オリジナル見開き御朱印帳(大判)のデザインが基になっている。
「通常の御朱印帳に直書きすると四体を使ってしまいますので、出来れば見開きの御朱印帳がお薦めです」
とは、錦鯱さんのアドバイス。
名古屋で一番新しい、錦鯱神社。
私たちは、まさに神社が誕生するその瞬間を目撃しているのかもしれない――。
【錦鯱神社】
〒460-0011
愛知県名古屋市中区大須3-4-13
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