日本を代表するパンクバンド、「the 原爆オナニーズ」。
結成は1982年、TAYLOW(vox)EDDIE(bass guitar,vox)JOHNNY(drums)SHINOBU(guitar)は、地元愛知を拠点に活動を続けている。
映画『JUST ANOTHER』は、the原爆オナニーズを活写したドキュメンタリー。
ドキュメンタリー映画への出演は、原爆オナニーズ結成38年で初のキャリアという。
原爆オナニーズの「現在」にカメラを向けたのは、映像作家の大石規湖(おおいし のりこ)監督。
新型コロナウイルス(COVID-19)禍により本年度の開催が中止となった「今池まつり」、本来なら祭真っ盛りのはずの9月18日(金)、名古屋シネマテーク(名古屋市千種区今池1-6-13 スタービル2F)で世界一早く『JUST ANOTHER』が先行上映された。
『JUST ANOTHER』上映後にはthe原爆オナニーズのメンバー全員と大石規湖監督が登壇し、大いに盛り上がった。
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【ゴチソー尾張】では、大石規湖監督に単独インタビューする僥倖を得た。
大石監督の音楽経験の原風景から始まった話は、
監督の音楽観、
the原爆オナニーズについて、
ドキュメンタリーの舞台となった名古屋について、
次回作について、
と多岐にわたった。
思わぬロングインタビューとなったが、映画『JUST ANOTHER』を、原爆オナニーズを、名古屋を、そして大石規湖監督を知るための大変貴重な話を聞くことができたので、インタビューの雰囲気を出来るだけ再現してみた。
Q. 監督は、子供の頃から音楽好きだったんですか?
大石規湖監督 出身が静岡で、田舎だったので全然情報が入ってこなかったんですね。とにかく何を聴いたら良いか分からなかったんで、BSやNHKのラジオを情報源にしてました。70年代の音楽、ワイト島のジミ・ヘンドリクスのライブとかを小学生の時に観て、「こういうのがあるんだ!」と思いつつ聴き続けていました。
Q. リアルタイムの音楽ではなかった?
大石監督 そうなんですよね。でも、小学校3年生のころにスピッツを好きになって、ライブに行ったんです。その時に何故か「私、音楽の仕事したい!」って思って、そこから何というか突き進んでいったら、こうなった感じです(笑)。
Q. 音楽と同じくらい、映像もお好きだったんですか?
大石監督 子供の頃、近所のユニクロで買い物してる振りをしつつ、流れてるMTVをずっと観てたんです。田舎だったので、公演も近場では全然なかったですし。映像が音楽を知る切っ掛けの一つになってたので、ずっと「映像=音楽」という紐付けはあったんだと思います。大学卒業のときにたまたま受かったのが映像派遣会社で、映像を学び始めたのはそれからです。しばらくは、音楽と関係ないニュース番組でしたけど(笑)。
Q. 意外です。監督の撮るライブ映像は凄い迫力ですし、映像もお好きだったのかと。
大石監督 多分、先に音楽が入っているからだと思います。ライブを観て、学生時代にはコピーバンドみたいなこともやっていたので。演奏する体感や、ライブを観る体感が先にあったから、それに近づけたいと思って。映像が後から付いてきたことは、逆に良かったのかもしれません。
Q. 今では、すっかりライブ派ですよね?
大石監督 大学も山梨だったりしてなかなかライブに行けなかったので、もともとライブは貴重で、ライブの体感は非常に稀なことだったんです。実際にライブに行かせてもらって、撮影させてもらえるようになると、人と凄く知り合えるし、演奏者自身のことも知れる……距離感が、凄く近いじゃないですか。私が撮らせていただいてるのは、あまり大きなハコではないんですけど、その分、密に、直に音を体感できる場所です。音圧が凄くて肌がビリビリする感覚は、私の中では「これぞライブだ!」って感じます。
Q. 『JUST ANOTHER』には、コロナ禍の今となっては凄く貴重なライブ映像が沢山あります。本来、監督が『JUST ANOTHER』に込めたメッセージとは違う観方をされるかもしれないですね?
大石監督 完全に日常がコロナ以前に戻るのは難しいかもしれないですけど、『JUST ANOTHER』に写っている人たちはライブが生活の一部だと思うので、そんな気持ちに戻る切っ掛けになってほしいとは思いますね。でも、特別「コロナ禍だから『JUST ANOTHER』観に行かなきゃ」と思って観てもらうより、日常の中の一コマを写した映画なので、普通に観に来てもらうくらいがちょうど良いのかな、と思ってます。
Q. 劇中、EDDIEさんが「定職に就きながらバンドをやるって、カッコ悪かった」って言っていました。でも、映画ではそれはカッコいいことだって捉えてますよね?
大石監督 そうですね。「やりたいことだけやってればカッコいい」って、生きていく上で本当はリアルじゃないと思うんですよ。リアルに生きるということは、仕事もして生活していかなければいけないということで、その中でも全力でやりたいことをやるのって中々出来ることじゃないですよね。私は仕事はいっぱいやるんですけど、遊びはそこまで全力になれないですし(笑)。両立する、全部を大事にすることは、凄く真摯でカッコいいことだと私は思ってます。
Q. TAYLOWさんも、就職するからバンドを一度断って、でも仕事が慣れてきたら「出来そうだから、やる」ってなるんですよね。
大石監督 柔軟ですよね。「出来ないって言っちゃったから、出来ない」じゃなくて、やれるタイミングが来たら「やって良いじゃん」って、凄く柔軟で良いと思いました。
Q. JOHNNYさんは生粋のドラゴンズファンですが、名古屋人って自分の気持ちをあまり表に出さないところがあります。撮影中、この地方の人たちにそんな気質を感じることはありましたか?
大石監督 そうなんですね……心を開いていただくまでに、凄く時間が掛かりました(笑)。劇中でも分かるシーンがあるんですけど、隣で質問してカメラ向けてても目線すら貰えない時があって、「どうしよう」って(笑)。私も東京に住んでて名古屋に通いながら撮影してたんですけど、時間を空けてまた会いに行くと、関係がリセットされちゃうんです。多分、途中までメンバーの方々は、映画を作るって本気にしてなかったと思うんですよ。撮影期間中ある飲み屋さんで岐阜出身のマスターに「名古屋の人の気質ってあるんですか?」って聞いたら、「ちょっとシャイで、打ち解けるまでに時間が掛かる」って言われて、「そうか、私だからじゃなくて、誰に対してもそうなのか!」って、ちょっと安心して頑張りました(笑)。前作(『MOTHER FUCKER』2017年)では距離感があまりにも近い関係性だったんですけど、今回は一定の距離感を保ちつつ撮っていくのがベストなのかなと思いました。
Q. 監督お気に入りの名古屋メシって、何かありますか?
大石監督 「コンパル」のサンドイッチが好きですね。「味仙」も好きなんですけど、打ち上げで行くので気を張ってるから、あんまり食べてなくて(笑)。
Q. 劇中ではネガティブな発言が多かったSHINOBUさんですが、周りの方はSHINOBUさんをべた褒めでした。バンド活動していくことって、辛いことも楽しいこともあるんでしょうね?
大石監督 バンドって、重要だと思います。私も映画を作っていますが、撮影、編集、企画……今回、宣伝以外は全部一人でやってるような感じです。一人で完結して、完璧なことが出来る人は良いんでしょうけど、一人でものを作るのって限界があると思うんですよ。人間関係は凄く難しいかもしれないですけど、人と切磋琢磨してものを作ることの方が、より楽しいことが出来ると思うんです。作品としても、人と作ったからこそ出来るものもあると思います。
Q. 相乗効果、ですね?
大石監督 そうです。相乗効果って、一人じゃ生み出せないので。バンドでしか出来ないことって、絶対あると思います。私も、映像ですが「バンド組む」みたいな感じでやる方が、今は楽しいです。
Q. 『JUST ANOTHER』、監督はどんな人に観てもらいたいですか?
大石監督 私と同じ30代の人とか、なるべく若い方に観てもらいたいというのはありますね。(the原爆オナニーズの)ファンの方はもちろんですけど、ファンじゃない、全然知らない方にも観てもらいたいと思います。何かを辞めるとか、卒業しようとする時、もちろん辞めるのもその人の判断なので良いと思うんですけど、続けることで見えることもあるから、そんな切っ掛けとして観てもらえたら嬉しいです。
Q. 最後に、次回作の構想はお持ちですか?
大石監督 あります。
Q. やはり、音楽映画ですか?
大石監督 そうです。
Q. 『JUST ANOTHER』を挟んで、『MOTHER FUCKER』三部作みたいな感じでしょうか?
大石監督 三部作、になるのかな(笑)……でも、気持ち的には全部繋がっていると思うので、全然違う一本一本ですけど、自分もちゃんと続けていけたらと思います。
Q. 言える範囲で、情報はありますか?
大石監督 ……ヒットしない映画(笑)!でも、これで分かる人はいるんですよ、きっと(笑)。
ライブシーンを愛し続けることも勇気なら、巣ごもりを辞めることもまた勇気だ。
その両方を結ぶ存在、それが映画館なのかもしれない――。
映画『JUST ANOTHER』
10月24日(土)〜新宿 K's cinema
10月31日(土)〜名古屋シネマテーク
ほかにてロードショー!
以降、全国順次公開!
出演:
the 原爆オナニーズ
(TAYLOW、EDDIE、JOHNNY、SHINOBU)
JOJO広重、DJ ISHIKAWA、森田裕、黒崎栄介、リンコ 他
ライブ出演:
eastern youth、GAUZE、GASOLINE、Killerpass、THE GUAYS、横山健
企画・制作・撮影・編集・監督:大石規湖
1.78:1 | カラー | ステレオ | 90分 | 2020年 | 日本 |
配給:SPACE SHOWER FILMS
©2020 SPACE SHOWER FILMS
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