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今、映画界で最も重要な作り手の一人である、グザヴィエ・ドラン。


記者もドラン作品は大好きなのだが、自分でも意外だったが弊サイトでドラン映画を紹介するのは、今回が初なのだ。

せっかくなので、グザヴィエ・ドランについておさらいしておこう。


グザヴィエ・ドランは、1989年カナダ・ケベック州の出身。キャリアのスタートは子役俳優で、4歳から映画やテレビ番組、CMに多数出演した。

近年でも、『エレファント・ソング』、『神のゆらぎ』、『ある少年の告白』、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』等に出演しているので、俳優として注目している映画ファンも多いだろう。

だが世界がその名に注目するようになったのは、19歳の時に監督・主演・脚本・プロデュースした『マイ・マザー』が公開された2009年だった。

以来、立て続けに監督作品を発表。

『胸騒ぎの恋人』(2010年)

『わたしはロランス』(2012年)……トロント国際映画祭 最優秀カナダ映画賞受賞、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門女優賞、クィア・パルム賞受賞

『トム・アット・ザ・ファーム』(2013年)……ヴェネツィア映画祭FIPRESCI賞受賞

『Mommy/マミー』(2014年)……カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞、カナダ・スクリーン・アワード最優秀作品賞等9部門受賞

『たかが世界の終わり』(2016年)……カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、セザール賞 最優秀監督賞・最優秀編集賞など

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』では、豪華ハリウッド俳優(ナタリー・ポートマン、キット・ハリントンなど)の競演が話題になった。


30代となった天才ドランの次なる映画は、『マティアス&マキシム』。


今作もまた、想像通り一筋縄ではいかない。

友情が愛情に変わる一瞬を鮮烈に捉えた、まっすぐすぎるラブストーリー、「骨太な純愛映画」である。

そして、ずっとドラン映画に共通する「母と子」という大命題が、『マティアス&マキシム』でも根底に流れている。


そう。

『マティアス&マキシム』は、グザヴィエ・ドラン作品の集大成とも言える映画なのだ。


サブ④

『マティアス&マキシム』ストーリー

マティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン)は、幼馴染。

30歳になる彼らは、共に人生の岐路に立っている。


ある夜、友人宅で行われたパーティに出席した二人は、予期せぬハプニングに見舞われる。

友人の妹が、彼らに自主映画の出演を依頼したのだ。

それは、男性同士によるキスシーンだった。


マティアスは仕事も順調で、美しい婚約者もいる。

だが、マキシムとキスをした夜から、感情の起伏が激しくなる。


マキシムは家族に問題を抱えながらも、オーストラリアへの移住を間近に控えている。

マティアスへの想いに気付いてしまったが、友情が壊れることを恐れている。


二人の別れの日は、刻一刻と迫る――。


サブ⑤

グザヴィエ・ドラン監督作品はいつも、どこか正視するのが厳しい独特の肌感覚がある。

それは、どの映画にも共通して流れている、圧倒的な当事者感覚だ。


私たちはドラン作品を観るとき、他人事ではいられない臨場感に晒される。


例えば、ドラン監督の映画には、どの作品にも軽妙洒脱なコメディ要素が散りばめられている。

だが、観る者は常に苛まれる……「これは、笑っていいのか?」という居心地の悪さに。


これは正に、主人公が覚えている当事者感覚を、観者がダイレクトに疑似体験しているからに他ならない。

実生活でも同じだろう……居たたまれない空気を和ませようとする人のギャグを笑えない場面は、誰しも体験したことがあるはずだ。


そして、同様に誰しもが心に抱える、家族との葛藤。

ドラン作品は、どの映画にも母との関係に問題を持つキャラクターが登場する。


一番近しい間柄だこそ、軋轢は大きく重くなる。

観る者はやはり、まるで自分のことを指摘されているかのように感じてしまう。


サブ②

そんな姿勢は、『マティアス&マキシム』でも揺るがない。


不意に流れる不穏な空気を、友人たちは必死に打消そうとしてくれる。

今作ではグザヴィエ・ドランのリアルな友人たちがキャスティングされているので、居たたまれなさは痛いほどだ。


ドラン監督は『君の名前で僕を呼んで』(ルカ・グァダニーノ監督/2017年)に深いインスパイアを覚え、『マティアス&マキシム』の物語を誕生させたそうだ。

だが、作品テーマの根本は、友情が愛情に変わる刹那に他ならない。


その対象が同性なのか異性なのかは、さしたる問題ではない。

何故って、友達だと思っていた存在が恋愛対象に変わる瞬間は、誰しもが経験し、(それまでの)人生最大の衝撃を受ける出来事だということは、何人たりとも異存はないであろう。


極めて特殊な事例が、その実普遍性を帯びていると気付く瞬間……

これこそが、まさにグザヴィエ・ドラン作品の鑑賞体験の真骨頂である。


『マティアス&マキシム』がグザヴィエ・ドラン作品の集大成であるといった本意は、ここにある。

しかも……嗚呼、しかも、今作では久しぶりに、俳優グザヴィエ・ドランが、自らの監督作に出演しているのだ。


サブ③

今までずっと、「最新作が代表作」を地で行っていたグザヴィエ・ドラン。

だが、『マティアス&マキシム』は、それを塗り替える記念碑的映画になるやもしれぬ。


「グザヴィエ・ドランのベストは、『マティアス&マキシム』だ!」

そう語る映画ファンが、定着する予感がする――。


映画『マティアス&マキシム』

9月25日(金)より、

新宿ピカデリー

ミッドランドスクエアシネマ

ミッドランドシネマ名古屋空港

ほか全国ロードショー


配給:ファントム・フィルム


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『マティアス&マキシム』公式サイト