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2016年、富山県富山市で、議員報酬を見直す動きが活発となった。

富山市長が審議会に諮問し、特別報酬を10万円引き上げる方向で議論は固まる。


「富山市議の政務活動費が事実と異なる報告」という報道が駆け巡ったのは、そんな折だった。

すっぱ抜かれた市議は「富山市議会のドン」といわれていた自民党会派の重鎮で、富山県は「有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一」という保守王国。

スクープの衝撃は大きかった。


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取材したのは、「チューリップテレビ」というローカル局のニュース番組。

平成に開局した若いTV局のスクープにより、当該議員は辞職に追い込まれた。


ところが、チューリップテレビのスクープが齎した衝撃は、これだけに留まらなかった。

会派、政党を問わず、議員たちによる政務活動費の不正使用が次々と発覚し、半年の間に14人の議員が辞職する異例の事態となったのだ。


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ロードショー公開前から大変話題となっている、ドキュメンタリー映画『はりぼて』。

東海地方でも、いよいよ8月22日(土)から名演小劇場(名古屋市東区東桜)での上映が始まる。


映画『はりぼて』は、チューリップテレビで2016年に放送された番組「はりぼて-腐敗議会と記者たちの攻防-」の続編である。

だが、テレビ版を視聴していなくても十二分に楽しめるので、安心してほしい。


そう、『はりぼて』は、「楽しめる」ドキュメンタリー映画なのだ。


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『はりぼて』を監督したのは、チューリップテレビの報道記者としてニュースの最前線に立ってきた二人。


五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)監督は、兵庫県生まれ。

スポーツや警察担当の記者として経験を積み、2016年から2020年3月までニュース番組のキャスターも兼務した生粋のニュースマンだ。


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砂沢智史(すなざわ さとし)監督は、富山県生まれ。

営業や編成という部署を経て、2015年から報道記者になった。

まじめで素直で、粘り強い。そして、数字に強い。


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『はりぼて』では、未曽有の腐敗政治が白日のものとなった後の富山県をも活写する。

富山市議会は、政務活動費の使い方について「全国一厳しい」と条例を制定したのだが――。


潔く、耳障りのよい言葉ばかりを発するセンセイ方が、『はりぼて』では次のカットで呆気なく辞職する。

あまりの馬鹿馬鹿しさに笑うしかない……いや、嗤うしかない。


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おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉

不図、松尾芭蕉の名句を思い出さずにはいられない。


「やがて悲しき」とは、鵜飼見物の後のもの寂しさを詠んだのではなかろう。

俳聖たる芭蕉翁のこと、繋がれ鮎を食むことも出来ぬ鵜たちを、それを持て囃す人間の業を、「悲しき」と詠んだのではなかろうか。

(そして、それを公言しては案内してくれた方に失礼だと気に病む、己の狭量をも嘆いたのかもしれない)


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さて、ここから先は私たちの番だ。

私たちは『はりぼて』を観て、「おもしろうてやがて」……何、とするのだろう。


過去、世の中を憂う映画が、数多産まれた。

世情を糾弾するためのドキュメンタリーが、数多くの名作を産みだした。


その結果、たどり着いた令和だ。

世界は、正しくなっているだろうか。


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新たなる傑作ドキュメンタリー『はりぼて』を観て、

私たちは、どんな未来を作るのだろうか。


映画『はりぼて』、名演小劇場では公開初日の8/22 10:00の上映回に、五百旗頭幸男、砂沢智史、両監督のリモート舞台挨拶が予定されているので、是非ともお観逃しなく。


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『はりぼて』

8/22[土]公開@名演小劇場

【配給】彩プロ


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