やあ、子どもたち。
元気でいますか?

新がたコロナウイルスのせいで、大人たちはずいぶんたいへんな目にあいました。
そして、君たち子どもも、とっても不自由になりましたよね。

学校が休みなのに、あそびに行くこともできない。
友だちにも会えないし、そもそも自由に外にも行けない。

うちであそぶにも、ゲームはこっそりやらなきゃいけなかったり。
大すきなヒーローもアニメも、みあきちゃったりして。

そして、はじまった学校に行くのがつらい……。
そんな子もいるかもしれませんね。

みんなのために、色んな人のたちが、映画を紹介してくれました。
つらい気もちを忘れさせてくれる、そんな映画を。

【うちでみるえいが】、家族みんなで楽しんでくれると、嬉しいです。


『リトルミスサンシャイン』

監督:ジョナサン・デイトン
   ヴァレリー・ファリス

(Amazonプライム TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

婚姻届を提出した日に妻と一緒に劇場に観に行った思い出深い映画です。
ダメダメ家族が一丸となって、カリフォルニアの子供美人コンテスト会場を目指すお話です。
「負け組・勝ち組」「美人コンテスト」などに痛烈な皮肉を入れつつ物語は進むのですが、そんなテーマをいちいち気にしなくとも、はちゃめちゃで楽しく観れます!
なんといっても黄色いおんぼろマイクロバスがかわいい!
物語の終盤では、このバスも意志を持ったもう一人の主人公に見えてきます!
妻子は金沢で、自分は東京に住んでいるので、自粛期間は離れ離れではありますが、先日息子二人もこの映画を観て興奮していました。
こういう期間だからこそ豊かな映画を観て、心を穏やかに過ごしましょう。
また劇場で安心して映画が観られますように!

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市井昌秀
(いちいまさひで/映画監督)

1976年4月1日生、富山県出身。
俳優・柄本明が主宰の劇団東京乾電池を経て、ENBUゼミナールに入学し、映画製作を学ぶ。
2013年に初の商業映画「箱入り息子の恋」が公開。
最新作は「台風家族」(19)。現在新作準備中。


『ぼくらの七日間戦争』

菅原比呂志監督

(Amazonプライム Netflix TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

大人の言う事なんか聞かなくていい。

だからこの映画を勧められたからって観なくてもいい。

でも、聞いてほしい。

神様は七日間でこの世界をお創りになったそうだ。

たった、七日間の戦争だけど、こどもたちは自分たちの世界を創った。

だからみんなにも、自分たちの世界を創っていってほしい。

このコロナでぶっこわれた世界の中で。

その世界ではきっと、疾走する宮沢りえがノートにこう書き殴るだろう。

"Revolution"と。

明日を変えるのに戦車はいらない。

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辻村健二
(つじむらけんじ/映像ディレクター・アートディレクター・KPOPゲリラ・トークユニット清順派)

1979年生まれ
株式会社ガイネン代表取締役
毎月1日にSNS等に会社の次回予告をUP中
ところで会社の次回予告って何でしょうね?


『月世界旅行』

ジョルジュ・メリエス監督

(YouTube ビデオマーケットなどで視聴可能)

映画は、魔法です。人の心をあたたかくしたり強くしたり、大きな力をくれたりします。
これから書くのは、そんな映画の魔法をつくりだした、本当にいた魔法使いのお話しです。

ジョルジュ・メリエスは、今からおよそ160年前のパリでくつ職人の息子として生まれました。ジョルジュは子どものころからお話しを考えるのが大好きで、紙でつくったお人形でおしばいをしたりして遊んでいました。
人をおどろかせるのが得意だったジョルジュは、大人になると手品師になります。ジョルジュの手品は、多くの人をよろこばせて大人気になりますが、そんなとき、ジョルジュはまだ発明されたばかりだった映画に出会います。手品師のジョルジュはそれまでになかった、手品のような新しいわざをたくさん使って映画に魔法のいぶきをふきかけました。たとえば、アメリカ人がはじめて月へ行くよりも67年も早く、ジョルジュは想像力のつばさを使って月の世界にたどり着いたのです。それはまさに映画の魔法そのものでした。
しかし、それからしばらくして大きな戦争がはじまると、それらジョルジュのたくさんの魔法はとかされ、兵隊さんたちのくつのかかとに加工されてしまいました。

さて、戦争がおわったあとにものこされた、数少ないジョルジュの映画の中で、今回ごしょうかいする映画が『Voyage dans la Lune(月世界旅行・げつせかいりょこう)』です。
短い映画ですので、四の五の言わずにまずはごらんください。

……おもしろかったですか? 風変わりな人やヘンテコな生き物がたくさん出てきて、おもしろかったでしょう。
それとも、おもしろくなかったですか? おしゃべりをする人が出てこなかったから、もしかしたらたいくつだったかもしれませんね。

それでは、次に魔法を使うのはあなたです。
昔の日本には「活動写真弁士(かつどうしゃしんべんし)」とよばれる人たちがいました。まだ映画におしゃべりがなかった時代、登場人物のセリフなどのかわりに、お話しを解説してくれていた人たちです。
『月世界旅行』に出てくる人たちは、どんなことをおしゃべりしているでしょうか? 映像だけではよくわからないことを想像してみましょう。
たのしいお話しを思いついたら、活動写真弁士をマネして、ご家族やお友だちに映画を解説してみてください。

もしだれかをよろこばせることができたのなら、あなたはすでに魔法使いなのかもしれません。そして戦争によってうしなわれたジョルジュ・メリエスの魔法をとりもどすことができるのは、あなたたち魔法使いにほかならないのです。

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賀々贒三
(かがけんぞう/映画監督)

狭山市立入間野小学校在学時に映画制作をはじめ、現在にいたる。
近日完成予定の新作映画『マンチの犬』ほか、長編映画を準備中。


『こどもしょくどう』

日向寺太郎監督

(TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

この自粛生活の中、我が家の中学生、小学生、幼稚園児の三兄弟みんなが楽しめる映画はないかと探している時、ふと目に留まった作品。

『こどもしょくどう』

小さな定食屋を営む両親の元で、愛情たっぷりのご飯で育てられている一人の男の子ユウト。
かたや粗悪な家庭環境、複雑な事情で、満足にご飯も食べられない子供達との物語。
ある日、辛く悲しい現実を目の当たりにしたユウトが、子供なりに抱く感情と葛藤の中「何か」のために必死に行動しようとするその姿は、ずっしりとした内容の中にも瞬間的に光が射して感動的。
我が家は、映画を見終わった直後、誰も何も言葉を発することなく、それぞれがそれぞれの「何か」と静かに向き合っていた、と思う。
もしかしたら、小さい子供達にはヘビーだと感じる方もいるかもしれないが、お腹が空けばご飯が食べられること、家族で笑い合って過ごせることが当たり前ではないと、大人になっていく過程でそれぞれが感じてくれたらいいなって。我が家は観せてよかった。

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あかぎあい

2003年までタレント活動後、結婚し現在は3児の子育て中。


『おおかみこどもの雨と雪』

細田守監督
 
(Amazonプライム TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

Vol.1で子どもと観る映画という視点を含めて、ピクサーの『リメンバー・ミ-』を書かせていただきました。今回の番外編は、そのまま「子どもと一緒に観る映画」ということで、大変恐縮ですが別の作品で再登場させていただきました。
 
私には現在6歳になった長男と今年4歳になる長女がおります。映画は子どもにとって人生のテキストのようなものだと改めて感じた前述の「リメンバー・ミ-」でしたが、子どもたちの感受性に強く感動を覚えたのが、この「おおかみこどもの雨と雪」でした。言い換えれば、子どもの感受性にも強く訴える映画と言えるのかもしれません。アニメと言えども、「親子」をテーマにした本作では、どちらかというと子どもより大人の方が楽しめる作りになっていると思います。それでも「おおかみこども」というキーワードのせいか、子どもたちは熱心に観てました。
 
「おおかみおとこ」と結ばれた花は、二人の子どもを授かりますが、二人ともおおかみに変身できる「おおかみこども」でした。幸せな生活は長くは続きません。「おおかみおとこ」が突然亡くなってしまい、花は人里離れた田舎に移住し新しい生活を始めます。人間か狼か、やがて子どもたちは人生の大事な選択をするというお話です。
 
私は自身の短篇映画『サヨナラ、いっさい』でも描きましたが、実は子どもたちは、大人よりずっと日々の中で「サヨナラ」をしているのではないかと思うのです。世界の中心でこの世に生を受け、徐々に視力が与えられると同時に、世界の輪郭は剥がれていく。足元の草花や虫たち、空を飛ぶ鳥、空に浮かぶ雲、今日のおひさま、落ちて見えなくなる雨や雪、失くしてしまったおもちゃに今日頑張って食べたグリンピース……どんなものにもサヨナラをして、人生は別れの連続であることを身を持って知りますが、それがいつしか感覚的に薄れていき大人になっていく。大人になると実感を伴う別れの体験はそう多くはありません。
 
子どもたちがどれだけのものをこの映画から受け取ったかは、はっきりとはわかりませんが、鑑賞後の対話から、雨と雪を通して、「サヨナラ」では言い表せない一つの別れを知ったように思うのです。ここにある別れは決して悲観的なものではなく肯定的なものです。人間は一人では生きていけない。子どもたちが大きくなるために必要な別れがこの映画には描かれているように思います。
 
最後に、本作は子育ての苦労が堂々と描かれていて、細田監督の「未来のミライ」と合わせて、現代のお母様お父様はそのリアルに共感するのではないでしょうか。この自粛生活で子どもと一緒にいられるのは嬉しいことですが、子どもとずっと一緒にいれば疲労困憊になることも多々あります。私自身、つまらぬことで子どもにあたってしまうこともしばしばで、映画の中で、それわかるわかると共感できるだけで心は救われるものです。こんな時期ですから、この共感できるということが何より重要なのだと思います。
 
たまには子どもと一緒に映画を、たまには一人で映画を、そしてたまには家族で映画を、映画はいつも誰かのためにあります。そして、映画館で映画を。映画館はいつでもあなたのためにあります。
 
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渡邉高章
(わたなべたかあき/映画監督)

東京生まれ湘南育ち。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒。映画やドラマの演出部と制作部を経て、現在は自身の団体「ザンパノシアター」にて映像制作を行っている。近作には家族や子供をテーマにした作品が多く、一歳の子を主人公にした前述の『サヨナラ、いっさい』は、全国四十箇所以上の映画祭や学会などのイベントで上映され、最高賞を含む複数の受賞を果たした。現在オンラインショートムービーコンテスト(https://www.fantv81.com/shortfilm-grandprix)で無料視聴が可能。


『ファインディング・ニモ』

アンドリュー・スタントン監督

(Amazonプライム TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

娘と一緒に観たこの映画の感動は忘れられません。

私たちの住む岐阜県高山市は今はもう映画館は無いのですが、当時唯一の映画館だった旭座に、毎年恒例となった家族行事の元旦映画に出かけ、当日は雪が吹雪くなか外に並んで待っていたのを覚えています。
『ファインディング・ニモ』はカクレクマノミの親子が人間によって離れ離れになり、再会するために奮闘する家族の絆を描いた冒険物語ですが、最前列シートに座った僕たちは、心躍るワクワクのストーリー展開に目を輝かせ、ドキドキスリリングな場面には息を飲み、自分たちもまるで海の中にいるかのような臨場感に包まれた、本当にハッピーな気分にさせてくれた最高の映画でした。

ぜひ家族と一緒にご覧いただきたい。

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中田裕一
(なかだゆういち/俳優)

岐阜県出身。
【舞台】一人芝居 朝鮮通信使-李藝-(JEJU平和祭)/李藝-その不滅の道-(韓国蔚山)
【映画】Jumbulingam 3D/マンハント/シンゴジラ(農林水産大臣代理 森田健児役)/亜人/関ヶ原/わさび/ハイヒール革命!/信長協奏曲/俳優亀岡拓次など。2020年はインドで「SUMO」https://youtu.be/kBSGv3sXAgw が、韓国で「英雄」https://youtu.be/VP-Z99H-dno
が公開予定。


『ベイブ 都会へ行く』

ジョージ・ミラー監督

(Amazonプライム Hulu TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

家族と『マッドマックス』がみたい!
あの爽快感、あの興奮、あの高揚感を家族と共有したいんだ!
自粛生活のストレスを吹き飛ばすフルスイングな映画を!
そんなご両親もいるかもしれません。
その想い、お子さんと共有するには結構なハードルの高さでしょう。
しかし大丈夫!
この映画がそんな願いを叶えてくれます。
『ベイブ 都会へ行く』

前作『ベイブ』も絵本調の微笑ましい作品なのですが、なにぶん牧羊犬という概念が現代社会日本に住む子供たちには乏しい。
そこでこのパート2。
2作目には、孤独、降りかかる悲劇、他者との距離等、これから社会に旅立つ子供たちへ、しゃべる動物たちというフィルターを通して厳しさを教えてくれます。

もちろん大人たちも自分の社会での姿を投影して、
感情のフルスイングを余儀なくされます。
単純に映画としてマッドマックスばりのキャラクターの濃さとドキワクアクションだけでも楽しめます。
CG過多のこの時代、CGではない味わい深い動物たちの共演を是非。
都会という荒野をかける姿は、そして劇中のベイブの行動は子供たちの心に響くはずです。
子供と一緒に見て、一緒に忘れられないカットを共有しませんか

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村上ユキヒコ
(むらかみゆきひこ/俳優)

1977/10/19 岩手県出身
俳優
『ドクターX』『BG』『全裸監督』『美食探偵』等、ドラマやCM、映画をメインに活動中。


『5つの銅貨』

メルヴィル・シェイヴルソン監督

(Amazonプライム TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

うちばかりにいるとどうしても気持ちが塞ぎがちになりますから、そういう時には、楽しくてゴキゲンな音楽映画なんか見たいなあ、というのと、小さな子どもたちといっしょに見るなら、やはり家族愛たっぷりの作品が良いんじゃないか、というそこらへんの要望をいっぺんに満たしてくれる一本としてこちらをオススメいたします。

実在のコルネット奏者レッド・ニコルズの半生を描いたこの1959年公開のアメリカ映画は、音楽映画という点においては、まさに名曲揃いで、主題曲「5つの銅貨」はジャズのスタンダード・ナンバーとしてもお馴染みですし、「リパブリック讃歌」も某家電量販店のCM曲(♪まあるい緑の山手線〜)として有名です。

主人公レッド・ニコルズを演じる往年の名喜劇俳優ダニー・ケイの甘くてスウィンギーな歌声。また随所に繰り出される至高のギャグに大笑い。なんといっても映画中盤、ダニー・ケイと“サッチモ”ことルイ・アームストロング(本人役)との『聖者の行進』でのセッションは何度観ても最高にゴキゲンです。

家族愛という点については映画後半がまさにそれで、ニコルズ一家を襲う苦難。それをユーモアと互いに助け合い、励まし合いながら乗り越えていくさまは胸を打ちます。ラストの展開はもう…私ごとながら、主人公同様娘がおりますもので、涙なしでは…!!

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渡部 直也 
(わたなべ なおや/俳優)

1983年広島県生まれ。
早稲田大学在学中より自主映画制作に携わる。
2016年、主演映画「食卓」(監督  小松孝)がPFFアワード2016にてグランプリ。
現在、昨2019年インディーズ映画界で大きな話題呼んだ主演作「宮田バスターズ(株)」(監督 坂田敦哉)の長編版「宮田バスターズ(株)-大長編-」が製作中。

Twitter: @Beyanso


『カールじいさんの空飛ぶ家』

ピート・ドクター監督

(Amazonプライム TSUTAYAオンラインなどで視聴可能)

今回の「家で観る映画」として、僕には子供と一緒に観る映画をぜひとのご依頼を頂きました。

僕には4歳の子がおります。
この時期ですから、映像はたくさん観られていると思います。

映画は、途中でコマーシャルが入るものではなく、がっつり観るものですので、
お子様が、がっつり観るなんて難しいという先入観を持っている親御さんも結構いらっしゃいます。
だから、どらえもんや、戦隊ものなら観ると思うけどと…それは、どれも原作ありきのものです。

子供に魅せるというのは、アメリカが一番得意です。

その代表例が「ピクサー」ええ、「Pixer」です。

僕がお子さんと一緒にみて、自分の子供の内に秘めるものを観察できる作品。

それは

『カールじいさんの空飛ぶ家』です。

ピクサーは、原作なしにネタの種から物語を作っていくことがあります。
それはとてつもなく純粋で誰しもが子供の頃に想像しえるネタです。

「風船って空を飛んでいく。その風船をいっぱいい〜ぱい集めて付けたら家まで一緒に飛んでしまうのかな〜」
いたってシンプルです。

その家には誰がいるのかな。その飛んでいく家には、誰がいるんだろう。
主人公は、生きる気力を失った老人と、大人社会にがんじがらめにされ、社会のルールにのっとって動くことが何よりも賢いのだと洗脳されている少年です。その社会に疲れきった老人から少年がもっと自由でいいんだと学び、またその少年から老人も生きることの意味を学び、ふたりが、生きることに対して大切なものを手に入れるのです。

この物語は、徹底した「ストーリー開発」が行われています。物語を作るのに脚本家一人ではなく、いっぱいの人が絡んでいます。
そして、だから日本はだめとは言わないですがが、日本にはとても少ない、ストーリー分析をする専門家がいるのです。
そして製作過程でモニタリングも行います。

この映画を観て、お子さんがどう反応されるか、それを観ると、その反応によって
どんな可能性があるのか、いっぺんにわかりますよ。

映画を観て、全然興味を示さない、集中しなくて他で遊びだす。
はたまた、必死で食い入るように観て終わったらヘトヘトになる。
ハラハラドキドキがとまらず、目を背けてしまったり、キャラクターに感情移入しすぎたり、
夜寝ていると、夢にでてきて起きてしまったり。
色々その子によって反応は違うはずです。

でも、この映画は、観るものの心がどう動くのか、ものすごく分析された映画です。
そして、どんな反応だったからといって、劣っている、優れているという訳ではないのです。
そう考えるのは、大人です。こどもは子供の世界で必死に色々考えてはります。
だから、今現時点でこの映画をみてその子の性格や素質を探るというのは意味がありません。
これからどんどん色んな経験をしていくなかで性格も変わっていきます。子供は色々軌道を変革させる多様性を持っているからです。
子供の想像力と今のあり方を信じて、なにより、無限の想像の世界を、可能性を楽しんでみてください。

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塩崎祥平
(しおざきしょうへい/映画監督)

地元、奈良県を舞台にした映画「茜色の約束」「かぞくわり」を脚本監督。
映画「佐渡テンペスト」「審判」ではプロデューサーを務める。



今回、色々な作品をお薦めしてくれたのは、映画監督や、俳優さん。
そう、映画を作る皆さんです。

映画を作る人たちですから、みんなに映画を好きになってほしいんです。
そして、ウイルスの心配がなくなったら、みんなに映画館へ来てもらいたいんです。

だから、映画館で観てほしい映画もお薦めしてくれました。


いただきます~みそをつくる子どもたち~

オオタヴィン監督


ぷくぷくの小さなモミジのオテテが味噌玉を握る。
医食同源に基づいた給食で使う味噌を仕込むのは、5歳児クラスの子どもたち。
代々作り続ける「お味噌のバトン」は、また次の子どもたちへ引き継がれていく。
それはまさしく「いのちと未来へのバトン」だ。
 
「食育」という言葉がまだまだ一般的でなかったころから、伝統的な和食でアレルギーやアトピーの園児の症状を改善し、日本中から教育視察が絶えない福岡市にある高取保育園。
 
お日様の光に負けないくらいキラキラの笑顔を振り撒きながら、裸足で大地を踏みしめ全力で遊び、「いただきます」と手を合わせ、一粒も残さずに昔ながらの滋味深い和食をモリモリ頬張る子どもたちは、全身で生きることを謳歌している。
 
オオタヴィン監督の優しい眼差しそのままに、いのちの輝きが写し撮られた映像からは、触れ合う手の温度や園舎を吹き抜ける風の匂いまでも伝わってくるようだ。
 
近年、医学的にも「腸活」の重要性が叫ばれる中で
わたしたち日本人にとって、どんなサプリや薬よりも効果的なのが、味噌をはじめとする日本の伝統的な発酵食。
 
腸内環境を整えることで免疫力が上がり、幸せホルモンのセロトニンが増えるという学説を、高取保育園の子どもたちが見事に体現してくれている。
 
食べることは、生きること。
食べたものが、わたしになる。
 
石田ゆり子さんの温かいナレーションや、谷川俊太郎さん作詞の「いま、生きていること」、坂本美雨さんのやわらかな歌声が華を添え、いのちを頂くことを体得している子どもたちの健全な体と精神の逞しさは、何ものにも代えがたい宝物であることにハッと気付かされ、心の奥深くからせり上がってくるような感動を与えてくれる。
 
未熟児で産まれ、重度の食物アレルギーがあったわたしの次男が通っていたのも、この高取保育園のように素足で園庭を走り回り、竹馬で遊び、「食」を大切にする幼稚園だった。
 
冬の冷たい空気の中、園舎に立ち込めるのは温かな湯気と煮上がったばかりの大豆のあまい香り。
園児みんなで大豆を潰し、糀を混ぜ、味噌を仕込む。
初夏には無農薬の梅を摘み、梅干しや梅ジュースを作り、秋にはたわわに実った柿を剥いて、軒下に干し柿を吊るす。
 
季節を彩る旬の食材に感謝しながら、自分たちで食べるものは自分で作る。
皮むきでできた切り傷は勲章だと云わんばかりの満足そうな笑顔。
なにより自分たちで作ったものは、何にも増して美味しいことを子どもたちは知っている。
 
この幼稚園との出会いがきっかけとなり、わたしも歴史ある地元の糀屋さんで手前味噌を仕込みはじめて7年目になった。
 
卒園した今も、味噌は勿論、ぬか漬けや納豆を好み、大好物は「天然塩と梅だけで仕込んだ梅干し!」と声高に宣言する次男の食物アレルギーは完治し、風邪も滅多にひかない。
次男のお蔭で食の改革が起きた家族も同様に、怪我をした時以外、病院知らずで暮らしている。
 
昔、祖母に言われた「よく噛んで食べなさい」「具合が悪いなら味噌を舐めときゃ治る」に勝るものなし!
 
暮しそのまんまが子どもに伝わっていくこと、そして先祖代々、受け継がれてきたシンプルで愛情のこもった伝統的な食文化の素晴らしさを実感している。
 
「まず、子どもを幸福にしよう。すべては、その後に続く。」
わたしが尊敬するイギリスの教育家・Alexander Sutherland Neillの言葉そのままが生きているドキュメンタリー映画
 
「いただきます~みそをつくる子どもたち~」
 
世界中を駆け巡る新型コロナウィルスの出現によって、生き方や本当の豊かさが問われている今だからこそ、なにを選び、なにを大切にして生きていきたいのかが
ふっとお腹に落ちてくる、子どもと一緒に観たい1本。

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市井早苗
(いちいさなえ/作家・俳優)

1978生まれ。
役者として舞台を中心に活動後、2007年、夫でもある映画監督・市井昌秀監督作品「無防備」でにてW主演を務める。

第13回釜山国際映画祭コンペティション部門最高賞を受賞。審査委員長を務めたフランスの女優アンナ・カリーナ(Anna Karina)は「両作品とも女性を描いた美しい作品。とても真実味があり、シンプルで、作品の印象がずっと心に残る」と称賛した。

同作品は数々の映画賞を受賞。第59回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品され、国内外から高い支持を得る。

2013年、同監督作品、星野源・夏帆主演「箱入り息子の恋」の原作本を監督と共著。

2019年、市井昌秀との夫婦ユニット「市井点線」を結成。

同年、劇場公開された草彅剛主演「台風家族」の小説を執筆。
小説「台風家族」は翻訳され台湾にて発売中。



みんながいつの日か映画ファンになってくれたなら、本当に嬉しく思います。

みんな、大好きなテレビや、お気に入りのアニメなど、好きな作品があるでしょう?
例えば、戦隊ヒーローの『○○レンジャー』が好きな君は、○○レンジャー・ファンです。
美少女戦士の『◎◎プリキュア』が好きなあなたは、◎◎プリキュア・ファンですね。

では、「映画ファン」って何が好きな人なんでしょう?
そう、映画そのものを愛してる人のことです。

今から楽しみにしています。
映画ファンになった君たちと、いつか映画館で会うことを――。


【家で観る映画】vol.1

【家で観る映画】vol.2

【家で観る映画】vol.3


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