新型コロナウイルス(COVID-19)による緊急事態宣言は、当初5月6日の解除を目指していた。
しかし、解除どころか期間延長が現実となっている。

2020年のGWは、ゴールデンウィークではなく「がまんウィーク」などという、まったく笑えない駄洒落を為政者が発言する始末。
私たちの自粛生活は、もうしばらく続きそうだ。

がまんウィークが続いて恐ろしいのは、我慢に慣れた結果、収束後の生活が縮小してしまいそうなことだ。
巣ごもりしている今という時間は、解放されてから何が必要なのかを、自問自答する時なのだ。

今回、【家で観る映画】vol.5をお届けする。

寄稿してくださった文化人の方々は、巣ごもり生活を楽しむために、10本の映画をお薦めしているのではないだろう。
一緒に映画館を恋(乞い)こがれるために、1本の作品を挙げてくれたのだ。

だからこそ、当サイトでは【家で観る映画】のことを、【リフレイン映画】と名付けたのだ。

『お早よう』

小津安二郎監督

(Amazonプライム Netflix TSUTAYATVなどで視聴可能)

かれこれ1ヶ月以上在宅勤務を続けています。家には小さい子どもが2人、常にいる状態です。保育園ってありがたいなぁ、と思います。子どもはかわいい、可愛いけれどときに厄介で面倒な存在です。その厄介さが愛おしくて、イライラして、しかし我が子ですから…。

せっかくなので、親でもある私、という視点で【家で観る映画】をご紹介できればと思います。

この映画、「テレビがほしい子どもと、買ってやらないという親のちょっとした家庭内戦争」。ただそれだけの映画です。でも子どもたちの駄々や、大人の困り顔をみていると、どの時代でも親子は同じようなやり取りを繰り返すのだなぁとクスリとできます。
小津安二郎の映画を観ていると、特に家族というものがメタ的に表現されている部分に私はとても面白さを感じます。いや、家族の表現にとどまらず画面におさまる全てのものがあらゆる点で抽象化されて描かれているように感じます。あらゆる事象の髄を見つめ、それを「型」としてフィルムに収める。独特の演出を通してよりそれが完全なものとなっていて、まるで建築を見ているような気分になります。それを画面を通して眺めると、時代の流れの中でも変わらない家族や社会の悩みや息遣いを感じることができるような気がします。

『お早よう』自体は、ご紹介した通りの素朴かつシンプルなお話です。でも画面の向こうで文句をいう兄弟を見て、ぜひ「子育てなんてどんな時代もそんなもんだな」と笑ってみてください。


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松井 美帆(まつい みほ/俳優)

大阪府出身。中学時代から児童演劇の舞台に立つ。フリーの役者として活動していた大学時代、渡邉高章が主催する映像制作団体zampanotheaterに参加。『多摩川サンセット』、『サヨナラ、いっさい』、『エレファントソング』『別れるということ』など多数出演。


『華氏451』

フランソワ・トリュフォー監督

(Amazonプライム TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

この映画を初めて観たのは高校生の時。当時の私は何もかもが苦痛で、授業中も勝手に本を読んでいるような生徒でした。そんな時にこの映画を観て「思想管理のために読書が禁じられた世界」という作られた未来に釘付けになりました。
原作はSF小説の巨匠、レイ・ブラッドベリです。ただ、映画の方は直球のSFという感じでなく、人間ドラマに重点が置かれています。

この話の主人公モンターグは本を焼却するファイアマンという職業に就いています。読書を拠り所にしていた私には本が燃えるという設定がとても心苦しかったと同時に、ビジュアルとしては美しいと感じました。そんな矛盾があったからこそ、この映画が心に響いたのかもしれません。
モンターグも話が進むにつれて本に興味を持ち始め、矛盾を抱えるようになります。そして矛盾に苛まれるモンターグの方が、人として魅力的に見えるのがこの映画の肝です。

ここまで読むと「いわゆるディストピアものね」と遠い世界の話と思う人がいるかもしれません。ただ、確実に映画と現実は地続きです。この映画のように、思想が管理されてきた歴史だってあちこちにあります。昨今の情勢に「まるで映画の中の世界みたいだ」と思った人もいるでしょう。少なくとも私は、映画みたいな出来事は起こり得るのだということが身に染みました。

今だからこそ、こういう類の映画を観ることは現実を見つめ、未来を考えることに繋がるのではないでしょうか。
ストレスがたまるとアクションが派手な映画や、ワクワクするような映画を観たくなるものだと思います。もちろん私もそうなんですが、一定の期間を過ぎるとそればかりでは物足りなくなる時がやって来るんです。
『華氏451』はそんな時に、思考力にスイッチを入れてくれる作品です。

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三宅 美奈子(みやけ みなこ/映画監督)

東京生まれ、埼玉育ち。
高校生の時に初監督作品を制作して以来、独学で短編映画を作り続けている。
現在は神奈川在住でフリーランス。
映画だけではなく舞台など、ジャンルを問わずに活動中。
最新作『夜間飛行』はあいち国際女性映画祭で観客賞、小布施短編映画祭で小布施賞を受賞。
現在は長編企画の実現を目指している。
下記サイトに期間限定の予定で、2012年以降の作品を掲載中。


『震える舌』

監督:野村芳太郎
1980年 日本 114min

(Amazonプライム Netflix Hulu TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

1回見ただけで、一生忘れられないトラウマ作品です。横着こいて、手洗いをすっぽかそうとする度にこの映画のワンシーンが、叫び声が脳裏をかすめるようになり…。

皆さんも小さいころ「外で遊んだら手を洗いなさい!ばい菌が体に入ると死ぬよ!」と叱られたことがあるはず。それが決して脅しではない…と大人にまで容赦なく叩き込んでくれます。色んな意味で、いまおうちで観るには最高の作品です。

土の中に潜む、最凶・最悪のモンスター、破傷風菌。いつものように泥んこ遊びをしていた昌子ちゃん。落ちてた釘でうっかりケガをしてしまい…。数日後、昌子ちゃんは破傷風菌に侵されているとわかり、家族全員に想像もしなかった恐怖が訪れ、生命・家族崩壊の危機に…。

昨今のホラーのようなキャラ頼りではなく、見えない侵入者による恐怖をミニマムかつリアルに、息をつかせない迫力で描いているのがこの映画のすごいところ。「今の時代の、本当の恐怖を描きたかった」と監督の野村芳太郎も語っている通りで、キャリア終盤にして新境地を開いた会心作でもあります。

余談。一昨年、九州のとある映画資料館で高畑勲監督の追悼展があり、会場に「ホーホケキョとなりの山田くん 監督:野村芳太郎」なる取り違えも甚だしいパネルがあったのですが、その組み合わせを本当にやったら、唯一無二のカルト映画ができそうな気も…。

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大塚 大輔
(おおつか だいすけ/福岡インディペンデント映画祭・プログラミングディレクター)

大分県大分市在住(元名東区民)

細菌、もとい最近、自作の全国映画館・ミニシアターリストを無料公開しています。プロ野球開幕を待ちわびて、ドラゴンズの動画を見ながら部屋でバットを振る毎日。今のイチ推し選手は山本拓実投手。よく行く映画館はシネマ5(大分市)と別府ブルーバード劇場(別府市)。


『学校』

山田洋次監督

(Amazonプライム Netflix TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

「くら寿司大好き」小山亮太でございます。

僕が紹介する【家で見る映画】は、山田洋次監督『学校』です。
本当は『テラスハウス』をお勧めしようかと思ったんですが僕、気づいたんです。

「あれ映画じゃないな」って。

映画『学校』は、実は僕の生まれ育った東京の荒川区で撮影され、ロケで使われた学校は僕の母校なんです。
子供の頃見た懐かしい風景が記録されてていろんな思い出が蘇る。

言わば「あの頃の気持ちにトリップできる」特別な映画でもあるんです。

夜間中学校に通う訳ありな大人たちが、情に熱くて涙脆い黒井先生(西田敏行)通称 黒さんとの交流の中で救われ成長していくお話。
不良少女のみどり(裕木奈江)、文字の読み書きができないイノさん(田中邦衛)、不真面目だけどムードメーカーのカズ(萩原聖人)など
実力派俳優が織りなす人情劇は、笑いあり涙ありで『これぞ日本映画だよな』ってゆうTHE名作な映画ですね。

イノさんが黒板に力強く「オ グ リ キ ャ ッ プ」って書くマネは同世代の人なら誰しもがやりましたよね?(僕はやったよ)

ほんと登場人物がみんな良いんですよ、なんか人間臭くて。
情に溢れてて、優しくて、喧嘩しても仲良くて、間違ったことすれば叱ってやる。
人情味あって温かい人たちばかりで。人って良いなぁと改めて思います。

今は人と会わなくてもオンラインで顔を合わす事や会話もできる。
でも、それがあるから自粛生活もなんとか持ち堪えられているんだと思います。

やっぱり人を支えられるのは人なんだと。

これを見たら
「より一層人に会いたくなって、より一層人に優しくしたくなる」そんな映画だと思います。

いやぁ人って素晴らしい。そして映画って素晴らしいですね。

「人が映画を作り、映画が人を作る。」

こんな素晴らしい文化を、映画館を決して絶やしちゃいけない。

コロナが収束したら、まず最初にディズニーランドに行こうと思います。(いや、映画館行けや)

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小山 亮太(こやま りょうた/映画監督)

1984年8月11日生まれ。35さい。東京都荒川区出身。
幼少時代から「天才子役」の名をほしいままに『天まで届け』『大好き五つ子』『キッズウォー』
などの主役を務めあげ、活動の幅を広げるため中2の夏に単身渡米。
映画『天使にラブソングを2』の撮影に参加したが、主演のウーピーゴールドバーグと、足を踏んだ踏まないの口論になり掴み合いの喧嘩に。
その場にあった角材でウーピーにタコ殴りにされ、緊急搬送。そのまま映画を降板。
なんだかんだで、30歳で帰国。そこから昨年までミュージカル『アニー』のオーディションに参加するも、
「アニー役志望で来られても困る」と言う理由で毎年口論になり、落選。
現在はTVドラマ、映画の助監督、美術装飾をやる傍ら、自主映画に力を入れ現在も作品を作り続けている。
監督作『國の狗』『平らな和』はゆうばり国際映画祭、カナザワ映画祭など多くの映画祭に入選。
両作品は現在、YouTubeにて無料公開中。新作『セーラー忍者かげちよ』2020年春公開予定。

平らな和(2019年/40分)

國の狗(2018年/22分)

プロフィール、ふざけてごめんなさい!本当は僕、8月10日生まれです!

『Before Sunrise』

Richard Linklater監督

(Amazonプライム TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

20代後半、映画をこよなく愛する〝映画博士〟のような人達と出逢った。
私はこの人達から沢山のことを学んだ。
世界中の素晴らしい映画作品の数々や、現場での事や、芝居の事や、恋愛話や、人生観やもう色んな話を当時何度も集まっては日が変わるまで語り合った。
そんな皆んなが口を揃えて大好きだ!という作品がこの『Before Sunrise』だった。
私はその足ですぐにレンタルビデオ屋さんへ駆け込んだ。

物語は、一人旅同士の男女が列車の中で偶然出会う所から始まる。ひょんなことから列車から降り立ったウィーンで、次の日の明け方まで一緒に過ごすことになる。二人でウィーンの街を歩き回りながらひたすら会話を重ねていくストーリー。特に何か大きなことが起こるような物語ではないが、絵画のような美しいウィーンの街並みに魅了される。そして終始二人の距離感や会話や全てにおいてドキュメンタリーのようにリアル。徐々に惹かれあっていく二人が愛おしくてたまらない。
イーサン・ホークの瞳にやられる私。

後にその映画博士のような人達と一緒に映画『シーソー seesaw』(完山京洪監督)という作品を作った。
そしてオーストリアはウィーンで開催される映画祭に招待され皆んなで訪れた。
そう!!この作品『Before Sunrise』のロケ地をこの映画博士の皆んなで巡るという夢にも見たようなシチュエーション!
映画で見たあの美しい街並みも、あの路面電車も、二人が歩く川沿いのレンガ道も、橋も、二人がキスをした観覧車までも!皆んなではしゃぎ巡った。どんどん私にとって特別な作品になっていった。

映画は、映像を通しても、そして空想の中でもいろんなところに連れてってくれる。
そして現実世界でも訪れる楽しみもくれる。

またいつか映画を通して、日本全国&世界の何処かで撮られた美しい風景のロケ地を巡る旅行を出来る日が来る事を願う。
そしてそんな運命的な作品に《映画館》という特別な空間で再び出逢える日が来ることを心から願って止まない。
#SaveTheCinema 

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村上 真希(むらかみ まき/俳優・モデル)

東京都出身。
出演作
『シーソー seesaw』(完山京洪 監督)
『すず』(菱川勢一 監督)
『恋の手本』(高野充晃 監督)
『ねぼけ』(壱岐紀仁 監督)
『ハルカの陶』(末次成人 監督)
『死んだふり』(下山和也 監督)
他CM、PV、広告 等。

手しごと・職人・町工場をこよなく愛し、唯一無二の「伝統産業女優」として、仕事を通じて地方の振興に役立つことを目指し、大学や企業向けの講演&手しごとに関するWEBライターとしても活動中。

Twitter:@maki_murakamin


『ドラゴンハート』

ロブ・コーエン監督

(Amazonプライムなどで視聴可能)

「センターラインにおける監督の原体験は何ですか?」
アフタートークで聞かれるたび、子どもの頃に観たこの映画を挙げています。

人語を解するドラゴンとそれを狩るドラゴンハンターとの奇妙な友情。ドラゴンはハンターに対して悪態をつくものの、本当は彼を、人間を信じている。強さを持つ生き物が、その力を何かを守るために使う姿に心打たれる。

「動物と会話ができたらなぁ」という欲求を満たしてくれる、でもやっぱり人間は未熟で愚かで、他の生き物とは共存できないんだなと感じてしまう切なさもあり。自分にとって、人外バディものの原点です。

『センターライン』がお好きな方には、この映画をお勧めします。

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下向 拓生(しもむかい たくみ/映画監督)

愛知県生まれ、福井県育ち。代表作として、とある男と喋るスマホアプリとの15分間をリアルタイムで描いた『N.O.A.』(ミニシアターエイドにて配信予定)、新任検察官が自動運転AIを起訴する法廷サスペンス『センターライン』(2020年10月に大阪上映予定)。

『センターライン』公式サイト


『ふたりの男とひとりの女』

監督:ボビー・ファレリー
   ピーター・ファレリー

(Amazonプライム TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

主演はジム・キャリー
数あるジムキャリー主演作品の中でもダントツで一番好きな作品です。

『マン・オン・ザ・ムーン』かこれにするか悩みましたが今はとにかくくだらなくて笑える作品をご紹介したいと思いました。

『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズのレニー・ゼルウィガーがとてもかわいいです。

※この作品がきっかけで二人は婚約したそうですがのちに破局。

作中のブラックジョークはファレリー兄弟節でデリカシーのない僕には本当にツボです。

下ネタも満載一人で笑いたい時にはお薦めの作品です。

なかなか邦画でこういう作品は作れないけどいつか僕がやってみたいと思っております。
二重人格者を演じるジム・キャリーのメインキャラであるチャーリーと自身の内に潜む凶暴性の高いハンクのバトルは必見で、この演技はジム・キャリーにしかできないでしょう☆

僕自身俳優を志すきっかけが ジム・キャリーでしたから なかなか笑えないこんなご時世だからこそ原点に立ち返って何も考えずに馬鹿笑いできる映画として 大好きなこの作品を選ばせてもらいます。

笑いは世界を救う☆

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遠山 雄(とおやま ゆう/俳優)

1984年、韓国ソウル市出身。
 日韓のハーフとして複雑な家庭環境の中、屈折した感情を持って育つ。
 本作監督の大山晃一郎を巻き込み「劇団チキンハート」を立ち上げ、4年半で一回の公演で3000人の動員に成功する。
 誰もやった事の無いことをやる、芝居をしないことにこだわっている。 

映画『いつくしみふかき』
企画主演


『日雇い刑事』

奥秀太郎監督

(Amazonプライム TSUTAYAディスカスなどで視聴可能)

出演は今奈良孝之(exハイレグジーザス)、阿部サダヲ、宮藤官九郎、皆川猿時など。監督は奥秀太郎。

もう、かなり昔ですが、名古屋・シネマスコーレで鑑賞。
大人計画の役者さんの大ブレイク直前くらいの映画。しかし、満員のお客様の大爆笑からも大人計画のコアなファンがすでにたくさんいる事が伺えた。当時は大人計画の存在も知らなかった私ですがその面白さと観た事の無い映像表現に驚愕。こ、これは映画か!?

デジタルカメラ(ソニーVX1000)で撮られた手ブレ映像、音声はカメラマイクのみで録られていて聞き取りにくいセリフ、突如流れるサイケな音楽。そして照明もカット割りも通常の文法から痛快なくらい外れまくり。
だから、こんなのは映画じゃないと怒る人はいると思います。てか、いましたね。
それでも俳優達は、生き生きしていて、おそらくほとんどアドリブだと思われる演技が皆面白過ぎる。

奥監督は元々大人計画やハイレグジーザスの舞台映像を手がけており、俳優の個性を熟知し、それを引き出す演出を現場でちゃんと(?)しているのです。
私が奥監督の次の作品「日本の裸族」の撮影に参加した時にそれを目の当たりにしました。

あと素晴らしいのは日雇い刑事役の、今奈良孝之さん。声がいい!俳優は声だ、と偉そうな事を今奈良さんを観てるといつも思うのです。

で、ストーリーはというと…忘れました。
ストーリーはどうでもいいかな笑。刑事もののコメディです。

ハイレグジーザスや大人計画の面々が暴れまわる怪作。とにかく爆音で観て下さい。そうすればセリフも聞き取れます笑。
怒る人は怒ればいいと思います☆

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中村 研太郎(なかむら けんたろう/映画監督)

富山県高岡市生まれ。映画製作を独学で学び、2000年に8ミリ映画版『フリーキッチン』を初監督(長岡アジア映画祭インディーズコンペティション審査員特別賞受賞)。2014年に長編映画としてリメイクし劇場公開。TSUTAYA等でレンタル中。アマゾンプライムなどでも配信中。


『365日のシンプルライフ』 

ペトリ・ルーッカイネン監督

(Amazonプライム Netflix TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

私が選んだのは、監督の実体験をもとに自らが主演した作品、『365日のシンプルライフ』です。
作品の中で主人公ペトリは自宅にあるもの全てを倉庫に移し、「1日1つだけ倉庫から持ち帰ることができ、ほかに何も買わない」というルールのもと1年を過ごします。
この実験と通して本当に必要なもの、大切なものを見つめ直し、発見していく、といった内容です。
今回【家で観る映画】というテーマを頂き、正直とても悩みました。選び抜くのにみなさんかなり苦しまれたと思います。家で見るなら、思い切り涙できるものもいいな、やや、この状況下重たいものは勧めるべきでは無いか、など。実際私は古いミュージカル映画やヒューマンドラマの類を見ている時間が多いですが、自粛期間中に家の掃除や断捨離をしている方も多いかな?と思い、感情の消耗なく気楽にみれ、舞台がフィンランドということもありクリーンな映像が楽しめるのこの1本を選ばせて頂きました。今の時期にみるのは、ほど良いバランスかな、と思います。

みなさんの家に今ある、本当に必要で愛おしいもの、そしてそうでないもの。実験を通して、主人公が気付く意外な事実に、皆さんもきっと共感するはず。ありふれた景色から一歩引いてみることで、“もの”を認識し直す機会にこの映画がなれば嬉しいです。

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いのうえ まあさ(メイクアップアーティスト)

ロンドンを拠点に活動するメイクアップアーティスト。渡英前は東京にてアシスタントとして経験を積み、広告、PV、映画、ファッションなどの分野で幅広く活動。2018年に拠点をイギリスに移し、数多くのファッションショーにも参加している。http://marthainoue.com


『TOC TOC』

(邦題『OCD 〜メンタル・クリニックは大騒ぎ〜』)
ヴィチェンテ・ヴィジャヌエヴァ監督

(Netflixで視聴可能)

天気が悪い日は気持ちも悶々としてしまう。 これはいかんとコメディを浴びたくて仕方なくなった。 

Netflixのマイリストにあった
『TOC TOC』(邦題:OCD 〜メンタル・クリニックは大騒ぎ〜)
(TOCとはスペイン語で強迫性障害(OCD)のこと)

舞台はメンタルクリニックの待合室。病院の予約ミスのせいで同じ時間帯に診察を受けに来てしまった6人のやり取りを、 笑いを交えながらも人間愛たっぷりで描かれるワンシチュエーションコメディ。 

患者一人一人を見ていくうちに、無自覚な癖や彼ら自身の愛嬌が加わり、一人の人間としての枝葉がしっかりと見えてくる。俳優陣の体現っぷりが本当に見事なのです!
(私の大好きなロッシ・デ・パルマ!) 
スペイン語で繰り広げられる目まぐるしい掛け合いの巧妙さに飲み込まれ、一言も逃したくない!耳も楽しい!

悩みのせいで自分の人生を楽しむことが出来ないと話す彼ら。最後には皆ひっくるめて抱きしめたくなる映画でした。

調べてみたら原作は戯曲だそう。これ演じられたら楽しいだろうなあと、いつのまにかこの状況が収まったらやりたいことを思い巡らせていた。
今お家で観る、私のお勧めの1本です!

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根矢 涼香(ねや りょうか/俳優)

1994年生まれ。茨城県出身。
主な出演作に『根矢涼香、映画監督になる。』『ウルフなシッシー』『少女邂逅』


そもそも「ゴールデンウィーク」の名称は、1951(昭和26)年5月初週に公開した大映配給の作品が、創設以来最大の売上を記録したことに由来する。
大映・松山英夫常務は宣伝用語として「ゴールデンウィーク」という和製英語を作成し、翌年あたりから巷間でも定着しだしたとか。

黄金週間をもたらした映画は、獅子文六の新聞小説が原作の『自由学校』という。
「ゴールデンウィーク」なる新語を生み出した大映だけでなく、松竹も同じ原作、同じタイトルで製作し、しかも同時期に公開したという大変珍しい事例なのだそう。
(ちなみに、松竹版も大ヒットしたという)

吉村公三郎監督の大映版は主役に素人を配した意欲作で、渋谷実監督の松竹版は台詞が流行語になるなど反響が大きかったとか。
両作ともに、コメディ要素を含んだ社会風刺映画という共通点がある。

ちっともゴールデンでない黄金週間を強いられている私たちは、まさに「自由学校」にいるのかもしれない。
自粛という同調圧力めいた義務を果たしつつ、巣ごもりを如何に過ごしたかで、収束後の世界も変わって来よう。

第5弾、vol.5をお送りするに当たり、50作の映画リストを観ながら、アフターコロナに思いを馳せる。
そんな、黄金週間――。

Do refrain!

【家で観る映画】vol.1

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【家で観る映画】vol.5

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