1896(明治29)年11月25〜29日、在留外国人の社交場『神戸倶楽部』で、映画が一般公開された。

これが日本初の映画公開として、日本映画連合会は12月1日を『映画の日』と制定した。
映画の日を11月25日や29日としなかったのは、「キリが悪い」という理由とか。

1956(昭和31)年12月1日、『映画の日 第一回大会』が開催された。
両国国際スタジアムでは時の首相・鳩山一郎はじめ各界の著名人が祝辞を述べ、都心をパレードする盛大なセレモニーだったという。

1980年代から、映画の日には映画入場券を割引するサービスが拡大していく。
80年代半ばには、映画の日である12/1に加え、1、3、6、9月の1日を『映画ファン感謝デー』とし、年5回の割引デーが制定された。

1997(平成9)年、全国興行生活衛生同業組合連合会は、12/1以外のサービスデーは各都道府県の支部に自由裁量を認めた。
こうして、今ではほとんどの地域で、毎月1日『映画サービスデー』は、「映画が1,100円で観られる日」として親しまれている。

まさか、5月1日が、ゴールデンウィークの映画サービスデーが、こんなことになろうとは夢にも思っていなかった。

新型コロナウイルス(COVID-19)による緊急事態宣言から、早くも3週間が経過した。
せめて、あなたの自粛生活が、少しでも……ほんの少しでも、豊かなものでありますように。

祈りを込めた、【家で観る映画】10選。
vol.4に寄稿してくださった文化人の方々は、こちらの10人だ。

『HOUSE ハウス』

大林宣彦監督

(Amazonプライム TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

先日亡くなられた大林宣彦監督の『HOUSE ハウス』。
合宿中の7人の女子高生が屋敷に食べられていくパニック映画です。

おすすめポイントだらけなのですが、まず私が感激したのが、7人の女の子たちが皆ニックネームで呼び合っていること!本名は出てきません。
とってもお洒落で綺麗な「オシャレ」夢見がちでファンタスティックな「ファンタ」空手が得意な「クンフー」「マック」「ガリ」「メロディ」「スウィート」。
もうこれだけで最高です。
『repeat in the room』の主人公「リピート」という名前はこれを真似しました。

そして、全編通して使われているサイケな合成がたまりません。
田舎の気持ちいい景色も、屋敷で起こる怪奇現象も全部切り貼りコラージュの合成。
リアルなCGだとかなりグロテスクになりそうなシーンが多いのですが、
現実味がなくカオスで、嘘みたいに美しい映像が絶え間なく続いていきます。

その後の大林監督の映画とも通ずる、時を超えた愛や戦争、女性の母性といったモチーフも登場します。
監督がやりたいことを全部ぎゅっと詰め込んだような素敵な映画です。

大林宣彦監督の最新作「海辺の映画館 キネマの玉手箱」は今年の4月に公開予定でしたが、現在公開延期となってしまっています。
お家で大林ワールドを予習しつつ、監督のエネルギーをたくさん感じて、たくさん笑って、映画館再開の日まで元気に過ごしましょう!

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長谷川汐海(はせがわしおみ/監督)

名古屋学芸大学にて映画プロデューサーの仙頭武則氏に師事。
監督作『repeat in the room』が映画秘宝の斎藤工氏の連載「映画じかけのオレンチ」で紹介される。
大学卒業後は名古屋の映画館で働きながら制作を行っている。


『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』

スティーヴン・スピルバーグ監督

(Amazonプライム Netflix TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

インディ・ジョーンズシリーズ言わずと知れた名作の1つ。
私の生まれ年でもあり、幼い頃から父と観まくっていた。
インディアナ・ジョーンズ教授に憧れ、トラップを掻い潜るごっこ遊びで、友達が漕いでいるブランコの下を潜り抜けようとして頭に大怪我をしたり、ジャングルジムでから飛び降りて酷い目にあったり、ナイフの扱いをはじめとしたサバイバル技術を得る為にボーイスカウトに入団したりと、人格形成に多大な影響を受けた作品。

個人的に好きなのは冒頭の上海でのショーから始まり、インドに辿り着くまでの約20分に今作のイメージ・コンセプト全てが詰まっていると言っても良いぐらいのスピード感。
それと〝ショーティ〟を演ずる子役の〝キー・ホイ・クァン〟が大好き。

あの高揚感をもう一度映画館で楽しめる日を心より願っております。

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堀江善弘(ほりえよしひろ/俳優・ダンサー・振付家・喫茶Riverマスター)
ダンスカンパニーafterimage所属。
オフィスイグジット代表。
映画好きの父の影響により、映画を見る機会の多い幼少期を過ごす。演劇・ダンスなどを中心に国内外問わず活動し、現在は駅西のホリエビル1F《喫茶River》を拠点とし、新たなアートカルチャースポット創りに尽力している。
〝劇場ではない空間を劇場とする〟をテーマにマルシェ企画のオーガナイズや〝五感全てを刺激する〟をテーマにDJ、VJらをはじめとするアーティストと〝カレーを調理し振舞うライブ〟なども展開している。

※現在、喫茶Riverは5/6(水)まで休業中。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

ロバート・ゼメキス監督

(Amazonプライム Hulu TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

自分が書いてきたタイム・トラベル作品はすべて、これへの愛が原点です。
中学生の頃、愛用の黒い自転車に『デロリアン』と名付けてました。毎日学校帰りに『時計台』というレストランの前を必ず通るので「雷が落ちたらタイムスリップする」妄想を巡らせてました。もちろんそこを通る時は自転車を異常に速く漕ぎました。主人公マーティ・マクフライ役のマイケル・J・フォックスが狂うほど好きでした。
どの場面が好きかというと実は、冒頭。朝、時計が時間を告げ、ドクの家で変な発明品が動き出す。自動目玉焼き機とか自動缶切り機とか自動テレビスイッチとか。やがてドアが開きスケボーを操るマーティの足が映り「ヘイ、ドク」と台詞が入り…。この冒頭での情報がそのあと密接に関わってくる。話に無駄なところが一つもありません。何回観ても面白いので、ぜひ。
 
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鹿目由紀(かのめゆき/劇作家/演出家/劇団あおきりみかん主宰)

福島県会津若松市生まれ。物語を書きたいと思ったのは、小さい頃から読書と映画を観るのが好きだったので。舞台とか大変そうだよなと思っていたが、舞台を突き詰める生活を送ることに。先日、念願の映画脚本を書いたがこの状況になってしまい、いつか上映されることを祈っている。今はひたすら部屋で台本を書いている。


『12人の優しい日本人』

中原 俊監督

(TSUTAYAプレミアムなどで視聴可能)

私がこの映画を初めて観たのは小学生か中学生の時。家族みんなで大いに笑った記憶があります。
まだ日本に裁判員制度が無かった時代に作られた作品で、もし日本に陪審員制度があったら、そんな架空の設定のコメディー映画です。
陪審員に選ばれた12人が1つの部屋で被告が無罪か有罪かを議論する、それだけなのですが、登場する人物がやたらと仕切りたがる人や、人の話に割って入る人、話が飛ぶ人、根拠がない人、他人の意見に流される人、ただ議論したい人、早く帰りたい人、急にスイッチが入っちゃう人、などなど、それぞれが日本ならどこにでもいそうな人の特徴をぎゅっと濃縮したような濃いキャラクターで、それが面白おかしく、楽しんでいるうちに気が付けば約2時間があっという間に過ぎてしまいます。
難しいこと考えずに一気に観れるのですが、そんな中でも私たちが話し合いをするうえでの大切なことにもそっと気づかせてくれたりもします。寄稿するにあたりあらためて観ましたがやっぱり面白い映画だなと思いました。

私は映画を見るにも、音楽を聴くにも、ゲームをやるにも何にでも感情移入しやすい性格です。どっぷりと浸って楽しめる分、時にそれは大きな疲労感を伴うことがあります。今のこの世界や身の周りの状況、毎日入ってくる情報で少しずつ自分の中にもストレスが蓄積されているのを感じます。
そんな中でこの『家で観る映画』のお話をいただいたときに私自身観て疲れないものがいいなと思い、子どものころから好きなこの映画が頭に浮かびました。力まず気軽に楽しめると思いますのでまだ観たことのない方はぜひ一度観てみてください。

今は大変な時期ですが、この難局が終わったらまた劇場で映画を存分に楽しみたいと思います。お互い頑張りましょう!

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Motoya (もとや/ベーシスト/隙間三業)

ベースマガジン誌などを出版するリットーミュージック社主催の最強プレイヤーズコンテストのベース部門でグランプリを受賞。以降様々なアーティストやバンドのサポートとしてレコーディングやライブでベースを担当。自身のバンド隙間三業ではミニアルバム「253(2010)」、アルバム「隙間三業(2014)」最新作「kitsutsuki(2018)」では映画『別れるということ』に楽曲提供をしている。


『裸のランチ』

デイヴィット・クローネンバーグ監督
ウィリアム・バロウズ原作

(Amazonプライムなどで視聴可能)

春の明るい空の下に飛び出して思い切り羽を伸ばしたい!のに肉眼で捉えられない何ものかの力によって部屋に閉じ込められる日々をお過ごしの皆さま、そんな時に家で観たい映画といえばなんでしょう?今は叶わないことを夢見て、あてどなく広大な場所をたゆたうロードムービーを観るのも良いですね。この面倒な日々にカタがついたらそんな旅に出たいものです。でも今の我々の状況に即して、暗い部屋の中で今できる旅、内側(インターゾーン)への旅を描いた映画に浸ってみるというのはいかがでしょうか?
デイヴィット・クローネンバーグ監督の『裸のランチ』。
ヤク漬けの作家が自身の心の奥底へと迷い込む。
ゴキブリ、ムカデ、ドラッグ、タイプライター、同性愛、そしてウィリアムテルごっこ……。
支離滅裂で意味が分からない?人の内面や思考なんて「理解」できるものじゃないと思うんですよね。
部屋の灯りを落として、手元に強めのアルコールがあるとますます良いかもしれません。

ところでロードムービーだったら『天国の口、終わりの楽園』(アルフォンソ・キュアロン監督)を紹介したかったんですが、観返そうと思ったら手元にDVDが見当たりませんでした。誰に貸したのやら……。僕からDVD借りたって方、これを見たら連絡ください(笑)

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東海林 毅(しょうじつよし/脚本/監督/VFX)

大学在学中から映像作家活動を開始し1995年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭にて審査員特別賞を受賞。『劇場版 喧嘩番長』シリーズなどの商業作品を監督する一方、VFXアーティストとしても幅広く活動。近年、表現の幅を広げるために自主映画にも力を入れ『老ナルキソス』(2017)は第27回レインボー・リール東京でグランプリを受賞したほか国内外の映画祭で10冠を達成した。2019年には池袋シネマ・ロサにて短編自主映画のみを集めた監督特集『偏愛ビジュアリスト』が1週間上映された。
5/1〜5/20まで【配信映画祭】にて期間限定で有料配信中

『17歳の風景〜少年は何を見たのか』

若松孝二監督

(TSUTAYAオンラインなどでレンタル可能)

母親を殺した少年が、北へ北へと、ひたすら、自転車で走っていくロードムービー。若松孝二監督の作品です。
16歳の頃、初めて書いた脚本を監督してくださったのが、若松孝二監督でした。私が、ドラマってこういう感じでしょ、と書いた脚本を読んで、監督は「こういうものを書かせるから若い人が育たないんだ」とプロデューサーを怒りました。そして「今、ねえちゃんが怒ってることを書きなさい」と言ってくれました。当時は、周囲のあらゆるものに怒っていて、はじめてそれを開け放していいと言われた心身は興奮で雄叫びをあげ、脚本は一夜で書きあがりました。若松監督は、面白がってくださいました。嬉しかったです。
この頃、怒りについて考えています。16歳の頃は、自分の感じていることと他人の感じていることの温度差に怒り、自分の持っている体温が他人に伝わらないことに怒っていました。今でも芝居をする時、脚本を書く時、若松監督の言葉を思います。でも「自分にとって切実なことは他人にとって切実ではないことが多い」と知った時から、怒る前に虚しさを感じるようになりました。自分の切実さをないがしろにすると、怒りは湧かなくなります。28歳の今、怒りとはなんだろうと考えています。
『17歳の風景』の中で、少年はあてどないエネルギーでひたすらに走り続け、道すがら、人と出会います。17歳の小さな世界では出会えなかった、はじめて出会う人に触れます。そこには少年とは違うけれど確かに他人の生があり、切実さがあり、体温があります。
部屋の中では思いっきり走ることも叫ぶことも、風景を動かすこともできませんが、映画の中では風景が動き、誰かが思い切り叫んでくれます。それが自分の体温を代弁してくれるものでなかったとしても、自分の怒りも嬉しみも、確かにあると思い出させてくれるかもしれません。
 
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福永マリカ(ふくながまりか/役者/脚本家)

1992年1月4日生まれ。神奈川県出身。2002年より活動。近年は映画『漫画誕生』(大木萠監督)、舞台では鵺的『悪魔を汚せ』、『バロック』(脚本:高木登、演出:寺十吾)などに出演。朝劇下北沢メンバーとして脚本、演出をしている。現在、脚本家の米内山陽子と共同制作の映像『脳内トリップ』を配信中。https://note.com/nonaitrip/


『ただ、君を愛してる』

新城毅彦監督

(Netflixなどで視聴可能)

寒さが身にしみる2月初旬。
東京は新宿三丁目の「九龍」という酒屋の外席で、友人たちとお酒を飲んでいた。
話題は映画に辿り着いた。
好きな台詞を真似したり、劇中曲を歌ったりして盛り上がった。

ー人生1の映画は?

ーめっちゃくちゃ嫉妬した映画は?

ー好きな「映画の1stシーン」は?

ー原作を超えた映画は?

など、時間を忘れ、長く盛り上がった事を覚えている。
そんな中、一人が発した。

ーじゃあ…はじめての映画は?

それが題目にあがった瞬間、その場にいた全員が黙った。

「はじめての映画」

何をもってして「はじめて」というのか。
言わずともわかるようで、分からない。
僕らは、各々、数々の映画のタイトルを口に出したが、それでも悩んだ。
あれでもない…これでもない…。
帰りの電車でも考えた。
シャワーを浴びながら考えた。
布団に入ってからも考えた。

そして僕の辿り着いた「はじめての映画」が「ただ、君を愛してる」です。

中学生の頃に観た映画。
僕の地元広島には、東京に比べ映画館の数は少ない。
当時は、今よりももっと少なく、日常の中に当然それはなかった。

そんな中、一人で800円(たしか…)のチケットを握り締め、広島市内にある劇場に入っていった。

なぜ一人だったのか。
きっとそれは、失恋をした後だったからだろう。
なぜその映画だったのか。
きっとそれは、失恋相手が勧めていた映画だったからだろう。
詳しいことは覚えていないが、きっとそんな理由だったはずだ。

ただこれだけは、はっきりと覚えている。
はじめて一人できた映画館。
はじめて一人で観る映画。
劇場内の雰囲気・漂う匂い・座席の感触…何にも気を取られず全身で感じた。
当時の僕にとって、それはあまりに異世界であまりに緊張感のある場所だった。

そして、はじめて劇場で、映画で、泣いた。

映画館がなければ、映画に出会えない。
僕は今でもそう思う。
現在、全国の映画館が営業を休止している。

1日も早く映画館でまた、たくさんの映画と出会える事を願い、
そして、映画を撮る端くれとして、映画館でたくさんの方々に映画を観ていただく事を夢見ながら、
あの日の思い出を大切に「ただ、君を愛してる」を家で観ようと思う。

ーやっぱ映画っていいなあ。

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葉名恒星(はなこうせい/映画監督)

1992 年生まれ、広島出身。
東京学芸大学表現コミュニケーション専攻に進学。
その後、映画学校ニューシネマワークショップを受講。
現在は、フリーランスとして WebCM 等の制作 会社にて制作・ディレクターを勤めながら、 映画制作活動を行なっている。
自作映画として、カナザワ映画祭 2019や第 20 回 TAMA NEW WAVE コンペティション部門等で上映された『愛うつつ』(2019)などがある。
また、カナザワ映画祭第一回スカラシップ作品の監督に選ばれ、現在、長編映画『愛に逝く(仮)』(2020-2021年公開予定)を制作中。


『フランシス・ハ』

ノア・バームバック監督

(Netflix Goole play  Youtube などで視聴可能)

「私の選んだ道って最悪!」って思ったことがある人は必見の映画。

「自分の事を理解してくれる人なんて、実は周りに一人もいないかもしれない」と孤独を感じた時、あなたが丸ごとあなたを愛してあげるために観るべき映画がこれです。

この物語は、どこまで進んでも、主人公がダサくてしょうもない。
なのに目が離せないのは、主人公は、「モダンダンサーになる」という夢のために、とにかくもがいているから。

自分の冴えなさと、遠ざかる交友関係と、社会との関係の希薄さと、どんどん進む時間は、自分を焦らせる。

でも結局、今、自分が出来ることは、自分が決めた道の先にしかないんだってことを、この作品は教えてくれる。「自分なりに吐露を発信することは、実は周りの人間に光を灯すことなのかもよ?」と、問いかけてきてくれるラストが、とても良い。

きっと、観終わった後は、自分自身へ明るい眼差しを持って生きられる。
そんな、私の大好きな映画です。
(※20代のアダム・ドライバーが観られるのも◎)

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吉田麻希(よしだまき/映画監督)

映画製作団体『BANKARA ROCK FILMS』所属。
北海道函館市出身。主に新潟市で映画制作をしている。
主な監督作は『パンクロックベイビー』。
日比合作ドキュメンタリー映画『GlobalManyo』を公開予定。
*新潟・市民映画館シネ・ウインドを応援しています*


『プリデスティネーション』

マイケル・スピエリッグ
ピーター・スピエリッグ 監督

(Amazonプライム Huluなどで視聴可能)

鶏が先か、卵が先か。
誰しも一度は考えたことがあるであろうこの疑問を『プリデスティネーション』は地でいく。
SF界を代表する作家ロバート・A・ハインラインの「輪廻の蛇」を原作に、オーストラリアの気鋭、スピエリッグ兄弟が映画化した作品。SF映画としては小規模な作品ですが、イーサン・ホークの脂の乗った佇まいと驚異的な一人二役を演じて見せたサラ・スヌークの演技が観る者の目を離しません。
今作、SF映画ですが映画の序盤約40分は、バーでの会話劇です。宇宙を股にかけたスペースオペラや車が空を飛び交う近未来描写を期待していると肩透かしを食らうかもしれません。バーテンダーと一人の客の男が世間を騒がす爆弾魔についてだったり、他愛もない身の上話をしたりしています。やがて、客の男が「少女の頃だった話をしよう」と発したときには、すでに映画のなかに引き込まれているのではないでしょうか。そしてここからは何を話してもネタバレになるので、ぜひ貴方の目で確かめていただきたいと思います。
人生というのは、俯瞰してみると生から死へ多少の起伏はあれ、一直線で結ばれている。映画も同じだと思います。はじまりからエンドロールまで一直線で結ばれており、必ず終わりが来る。しかし、この作品は一度見ると映画のなかに閉じ込められてしまうかのような感覚に陥るのです。つまり終わりがありません。ひたすら、鶏が先か、卵が先かの問答に押し込められてしまうのです。時間があるこの時期だからこそ、一度この作品に閉じ込められてしまうのも悪くないのではないでしょうか。

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長岡俊平(ながおかしゅんぺい/上田映劇支配人)

小学生の時、野外上映で観た『ガンバの冒険』に阿鼻叫喚し、その日から映画を志す。
かつて上田映劇で『千と千尋の神隠し』と『ハリー・ポッターと賢者の石』を立ち見で観たあの光景をもう一度観るべく、あくせく働いています。
現在、上田映劇はコロナウイルスのため臨時休館中。ポップコーンは塩派です。


『アーリーサマー』

中村祐太郎監督

(シネマディスカバリーズで配信予定)

中村祐太郎監督『アーリーサマー』を観てください!
名作とかコアな作品もオススメしたいんだけど、自分が主演してる作品でごめんなさい!笑

これから期間限定でCinema Discoveriesってサイトで観れるようになります!

なぜ自分の出演した映画を選んだのかというと、この映画が名古屋の映画館シネマスコーレで製作された作品で劇場再開までの期間限定で配信され、収益のすべてを同劇場に還元されるからです!各地の映画館は存続の危機を迎えています。スコーレがなければこの作品自体も存在しませんでした。それに、語ればここに収まらないぐらい、僕にとってとてもとても特別な映画館なんです。
だから、お願いします。
配信されたら観てください。

他にも素敵な作品と月額1100円でたくさん出会うことができるはずです。
よければ、手を貸して下さい。

宜しくお頼み申し上げます。

以上を持ちまして映画紹介という名の告知を終わります。
僕に出来ることはこれくらいしかないのでご配慮して下されば幸いです。

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GON(ごん/俳優)

中村祐太郎初監督作品『ぽんぽん』でデビュー。同監督作『アーリーサマー』『おかしなふたり』、ムーラボ作品の滝野&高畑監督『Fuck me to the moon』、黒田将史監督『バカドロン』、新山佳也監督『IN BLUE』で主演。近年、磯部鉄平監督とタッグを組み『ユニバーサル・グラビテーション』『真夜中モラトリアム』『コーンフレーク』で立て続けに主演。国内外の映画祭に出品・受賞に導く・・・


【家で観る映画】vol.4、如何だったろう?

1896年に日本で初めて行われた映画公開は、今の映画ファンが想像する上映ではなかった。
エジソンが発明した「キネトスコープ(Kinetoscope)」による公開だったのだ。

キネトスコープは、一つの筐体を一人が覗き込む形で、当時は「ピープ・ショー」とも呼ばれていたそうだ。
私たちが思い描く映画上映は、リュミエール兄弟の所謂「シネマトグラフ(Cinématographe)」を待たなければならない。

一つの画面を、一人で観る
……まさに、私たちが今強いられている巣ごもりと似た状況ではないか。

不自由で、不安で、不確かな現在だからこそ、忘れないでいよう。
私たちが本当に観たいのは、動画ではなく、映画だということを。

世の中が落ち着いたなら、その時は真っ先に映画館を訪ねよう。
そして、大好きな映画を、皆で観よう。

Do refrain!
その時までは――。

【家で観る映画】vol.1

【家で観る映画】vol.2

【家で観る映画】vol.3


【家で観る映画】vol.4

【家で観る映画】vol.5

【家で観る映画】vol.6

【家で観る映画】vol.7

【家で観る映画】vol.8