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「2018年のベストムービー」「青春映画の新たな金字塔」との呼び声も高く、アメリカで社会現象まで巻き起こした話題作が、いよいよ9月20日(金)から日本でもロードショー公開となる。


タイトルは、『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』。

ボー・バーナムの映画監督デビュー作だ。


「エイス・グレード」というカタカナ表記だと、意味を捉えられないと思う向きも多いかもしれない。

「eighth(8th) grade」の方が、より分かりやすい。

「8番目の段階」即ち、「8学年」「8年生」といった意味だ。


アメリカの教育制度で8年生といえば、初等教育を卒業する学年である。

日本の「中二」に当たる14歳は、アメリカでは中学を卒業する年齢なのだ。


『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』ストーリー

SNSでの動画投稿が日課のケイラ(エルシー・フィッシャー)は、ミドルスクール卒業を間近に控えている。ネットではポジティブな内容の動画を配信しているケイラだが、リアルではネガティブそのものだ。

ケイラは同級生全員の投票で「学年で最も無口な子」に選ばれ、文集を飾ってしまう。人気者のケネディ(キャサリン・オリヴィエ)や、片想い中のエイデン(ルーク・プラエル)が選ばれた「最も目の綺麗な子」とは大違いだ。

そんなケイラたちに教師が配ったのは、靴箱だった。ジュニアスクールを卒業する3年前、中学を卒業する自分へメッセージを詰め込んだ、謂わばタイムカプセルだ。

ケイラは、残りわずかな日々を、少しでも中学生活を充実させるべく躍起になる。だが、ケネディは冷たく、エイデンにはどう近づいていいのか分からない。パパ(ジョシュ・ハミルトン)は、要らぬお節介ばかりしてくる。

キラキラの未来なのか、冴えない日常なのか……ケイラのハイスクール生活は、すぐそこに迫っている――。


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『エイス・グレード』のメガホンを取ったのは、28歳の新鋭ボー・バーナム(BO BURNHAM)監督。

今作で映画監督デビューとなるバーナム監督は、その経歴も凄まじい。


バーナムは、2006年YouTubeにコミカルな音楽動画を発表。なんと3億回もの再生を記録した。

2009年にはアルバムデビューを果たすが、バーナムの才能はそれだけに収まらない。

2010年からはコメディーショーを手掛け、2017年からは俳優業に挑戦したバーナム。多才ぶりは留まるところを知らない。


生まれた時からIT環境が整い、SNSが構築されていた現代の若者たちは、「ジェネレーションZ」などと呼ばれている。

そんな新時代のスタンダードを描くに辺り、ITエンターテイメントの申し子たるボー・バーナムは、まさに打ってつけの人材である。

バーナム監督は、ネット環境が当たり前に整い、SNSがコミュニケーションの必須アイテムとなった子らの青春を、リアルに、コミカルに、そしてハートフルに描いた。


主人公ケイラを演じたエルシー・フィッシャー(ELSIE FISHER)は、キラキラと輝く日常を送りたいと渇望する。

クラスメイトたちのようになりたいと、足掻き、煩悶し、もがき苦しむ。

そんな熱演が認められ、フィッシャーは2018年最多の新人映画賞を獲得するに至った。


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のたうち回って、砂を噛み、泥水をすするような青春を描いたのが、「キング・オブ・リア充」と言って差し障りないほどの成功を収めたボー・バーナムなのだから、面白い。

劇中、ケイラが憧れてやまないエイデンやケネディも、きっと心中は悩み苦しんでいるのだろう。

楽しげなハイスクール・ライフを送っているようなオリヴィエ(エミリー・ロビンソン)も、眠れぬ夜を過ごしているのだろう。

そして、ひょっとしたら、バーナム監督自身ですら……

映画『エイス・グレード』には、1秒も描かれていないスクリーンの裏側を想像させるような、全く言及されない物語の深淵を垣間見せるような、得体の知れない奥深さがある。


また、映画『エイス・グレード』は、もう一つ作品世界を広げてみせる。

それは、ケイラの父であるマークを演じたジョシュ・ハミルトン(JOSH HAMILTON)の存在である。


親という存在は、報われない。本当に、報われない。

日々奮闘していても子供たちの目には鬱陶しい存在としか認識されず、あまつさえ自分一人で大きくなったような顔をされる始末。

そう、青春時代の冴えない日々は、親という立場になっても、やっぱり続くのだ。


冴えない子ら、報われない親たち。

そんな救われない人々ばかりを写した映画の、いったい何が面白いのだろう。

是非とも、劇場で確かめてみると良い。

93分の映画に、生粋のエンターテイナーであるボー・バーナムならではの人生哲学が凝縮されている。


そして、余裕があるならば周りの観客にも気を配ると良い。

あなたと違う年代の人は、あなたが泣かなかった場面で泣いているはずだ。

稀代のストーリーテラーであるバーナム監督の作品世界なればこその、真に貴重な鑑賞体験を味わえる。


隣席の見も知らぬ観客が泣いている場面で、あなたは泣き所が分からず戸惑うかもしれない。

しかし、そのシーンで、歳を経て親の世代となったあなたは号泣することになるのかもしれない。


だからこそ面白いのだ、映画館は――。


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映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

9/20(金)~

ヒューマントラストシネマ有楽町 渋谷シネクイント

ミッドランドスクエアシネマ

ほか全国ロードショー


配給:トランスフォーマー


© 2018 A24 DISTRIBUTION, LLC


映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』公式サイト

http://www.transformer.co.jp/m/eighthgrade