峯田和伸の出演する映画は、何故こんなにも名作揃いなのだろう。
『少年メリケンサック』(監督:宮藤官九郎/2009年)
『USB』(監督:奥秀太郎/2009年)
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(監督:三浦大輔/2010年)
『素敵なダイナマイトスキャンダル』(監督:冨永昌敬/2018年)
特に、田口トモロヲ監督作品には、峯田はなくてはならない俳優だ。
『アイデン&ティティ』(2003年)
『色即ぜねれいしょん』(2009年)
『ピースオブケイク』(2015年)
ご存じの通り、峯田といえばパンクロックバンド「銀杏 BOYZ」のヴォーカル、ギターである。
むしろ峯田和伸を俳優としてではなく、ミュージシャンとして認識している方も多かろう。
峯田の映画デビュー年である2003年「GOING STEADY」(1996年~)解散後に結成された銀杏 BOYZは、ストレートで突き抜けた楽曲、泥臭さの中にロマンチシズムが溢れる詞世界、激しく優しいライヴ・パフォーマンスで、熱烈な支持を集めている。
『漂流教室』(2005年)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2009年)、『ぽあだむ』(2014年)、『骨』(2017年)など、代表曲には事欠かない。
2019年1月には2度目の日本武道館公演を敢行している、今もオンタイムで活躍するパンクバンドである。
そんな峯田和伸の世界観に惚れ込んだのが、「ひよっこ」(NHK/2017年)、「泣くな、はらちゃん」(NTV/2013年)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(監督:瀬々敬久/2017年)と数々の名作映画、TVドラマの脚本を担当した岡田惠和。
映画『いちごの唄』は、峯田と岡田が作り上げた、青春と恋の物語だ。
岡田が脚本を書いた「泣くな、はらちゃん」、「ど根性ガエル」(NTV/2015年)で演出を担当した菅原伸太郎監督が、初の映画演出に挑む。
『いちごの唄』ストーリー
笹沢コウタ(古舘佑太郎)は、冷凍食品製造会社で働いている。一人暮らししているボロアパートには勝手に野良猫が住み着き、隣人のアケミ(岸井ゆきの)にはぞんざいに扱われている、不器用だけど優しい青年だ。七夕の日、会社の同僚が楽し気に笹を飾る中、いつもは朗らかなコウタは遠巻きに見ている。コウタにとってたった一人の親友だった伸二(小林喜日)が交通事故で亡くなったのが、7月7日なのだ。
中学生の頃、コウタ(大西利空)と伸二は、クラスメイトの千日(清原果耶)を「天の川の女神」として崇拝していた。そんな記憶を想い出していると、コウタは一人の女性(石橋静河)とすれ違う。そして、その瞬間に衝撃を受ける。七夕の日に偶然巡り合ったその人は、10年前に伸二と2人で密かに「あーちゃん」と呼んで崇めていた、天野千日だったのだ――。
何はなくとも、コウタ役の古舘佑太郎が素晴らしい。
「ひよっこ」、『ナラタージュ』(監督:行定勲/2017年)、「この世界の片隅に」(TBS/2018年)と映画、ドラマに出演する注目株の若手俳優だが、古舘の本質はバンドでもソロでも活躍するミュージシャンだ。
ともすれば観客にうすら寒く感じられてしまうであろうコウタの行動だが、古舘の演技によって俄然光り輝く。
コウタは、不器用で、カッコ悪く、無様で、愛おしい。
何かに似ているとは思わないだろうか?
蛇足を承知で、敢えて書く。銀杏 BOYZの主人公、そのものだ。
ソロアルバム「BETTER」(2016年)や、2017年から始動しているバンド「2」(ツー)など、古舘佑太郎の音楽シーンにも触れたくなった。
そして、ヒロインの……いや、もう一人の主人公、天野千日役の石橋静河が、本当に素敵だ。
思えば、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(監督:石井裕也/2017年)での石橋は衝撃的だった。
短いシーンながら印象的だった『泣き虫しょったんの奇跡』(監督:豊田利晃/2018年)など順調にキャリアを積んだ彼女は、『きみの鳥はうたえる』(監督:三宅唱/2018年)で再び日本映画界に衝撃を与えた。
今回、「あーちゃん」で三たび衝撃を与えてくれた石橋静河は、どんな難役も「恵まれた役」に思わせてしまう、凄まじい才能の持ち主だ。
今作『いちごの唄』は、二人の主人公、コウタと千日が、呪縛から逃れる物語である。
ふたりに魅力が無いと作品の根底が崩れてしまうので、重役を遣り遂げた、演り遂げた古舘佑太郎と石橋静河には、惜しみない拍手を送りたい。
そんな主人公たちが「等身大」の若者に見えるのは、二人の過去を描いた場面を担当する俳優たちの存在があってこそだ。
中学生時代のコウタ、千日、そして伸二を演じたフレッシャーたちの熱演を観逃さないでほしい。
大西利空、清原果耶、小林喜日には、「子役」という言葉は使いたくない。
シーンは違うが、蒔田彩珠も同様だ。
また、主人公たちの「現在」を雄弁に語る、家族や同僚、友人の存在も大きい。
和久井映見、泉澤祐希、岸井ゆきの、ポール・マグサリン、吉村界人ら、脇を固めるキャスト陣は本当に好い演技を見せる。
その中でも、光石研と宮本信子は流石としか言いようがない。
光石と宮本は、コウタと千日を呪縛から解き放つ物語のキーマンである。
『いちごの唄』は、7月5日(金)より全国でロードショー公開となる。
ミュージシャン・峯田和伸の、銀杏 BOYZのファンならずとも、万人にお薦めできる青春映画だ。
出番が多いとは言えないものの、俳優・峯田和伸の存在感もキラリと光る。
また、書き下ろし主題歌「いちごの唄」(銀杏 BOYZ)シングルCDが、本作の公開劇場だけで7月5日(金)の公開初日より数量限定発売される。
鑑賞後は、ぜひ売店もチェックしてほしい。
7月7日は『いちごの唄』では重要な意味を持つ日だが、七夕の日曜日であるこの日、名古屋では舞台挨拶が予定されている。
ミッドランドスクエアシネマ(名古屋市中村区名駅)、9:00〜の上映回に、なんと古舘佑太郎と峯田和伸がやってくるのだ。
主演の古舘と、原案・出演の峯田、共にミュージシャンである2人はどんなトークを炸裂させてくれるのだろう。
今から楽しみだ。
是非とも、劇場で巡りあってほしい。
不器用で、カッコ悪く、無様で、愛おしい……そんな青春映画に!銀杏 BOYZの楽曲に!!
映画『いちごの唄』
映画『いちごの唄』公式サイト
©︎2019「いちごの唄」製作委員会
コメント