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全国の映画館で絶賛公開中の『ばあばは、だいじょうぶ』は、ジャッキー・ウー監督の最新作。

原作は、第63 回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(2017年 小学校低学年の部)で、第3回「児童ペン賞」童話賞(2017)を受賞した、10万部以上のベストセラー絵本『ばあばは、だいじょうぶ』(原作:楠章子/挿絵:いしいつとむ)。


ばあば役は60年以上のキャリアを持つ冨士眞奈美、翼役を演じたのは国民的天才子役・寺田心。

2025年には700万人(65歳以上の高齢者の5人に1人)以上が罹患すると言われている認知症を、小学生の視点から描き出す。


ウー監督といえば、2017年のマドリード国際映画祭(スペイン)で最優秀外国映画主演女優賞(鈴木紗理奈)をもたらした『キセキの葉書』が記憶に新しい。

今作『ばあばは、だいじょうぶ』も、2018年12月ミラノ国際映画祭(イタリア)で主演男優賞(寺田心)、最優秀監督賞(ジャッキー・ウー)W受賞という快挙を成し遂げた。

ちなみに、寺田心(当時10歳)は、最年少での主演男優賞獲得であった。


『ばあばは、だいじょうぶ』ストーリー

翼(寺田心)は、小学生。お祖母さん(冨士眞奈美)の喜寿(77歳)をお祝いするために集まった親戚にからかわれただけで泣きそうになったり、ちょっと弱気なところもあるが、明るくて素直な良い子。

真面目なお父さん(内田裕也)と優しいお母さん(松田陽子)は仕事が忙しいけれど、大好きな「ばあば」がいつも翼のそばにいてくれる。

ところが、草花が大好きで、いじめっ子からも助けてくれる、優しくて頼りになるばあばの様子が、近頃ちょっと変だ。匂いを感じなくなったり、曜日や人の名前を忘れてしまったり。

変化に気付いたお父さん、お母さんが、病院で診てもらうと、ばあばは「わすれてしまう病気」になってしまったのだという。

次第に認知症が進行していく中、翼はなんだか怖く感じて、いつも一緒だったばあばに近寄らなくなる。そんなある日、ばあばが突然いなくなってしまって――。


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5月18日(土)、ジャッキー・ウー監督と寺田心が、イオンシネマ名古屋茶屋(名古屋市港区西茶屋)へ舞台挨拶にやってきた。

愛知県出身の心くんにとっては、凱旋舞台挨拶となった。


MC. ご来場の皆様に一言ずつお願いします。


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ジャッキー・ウー監督 お忙しい中来ていただいて、本当にありがとうございました。色んな思いで、普通のエンターテイメントと違う思いで、映画を作りました。どうもありがとうございます。


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寺田心 いつも僕のことを応援してくださる皆さん、「はじめまして」の皆さん、こんにちは!寺田心です。ここ、名古屋です。僕の地元です。先ほど舞台挨拶をさせていただいた岡崎のイオンから、こちらの茶屋のイオンまで移動する時に、自分のお家の近くを通って、「はぁ、名古屋だなぁ」って思うことが、とても嬉しかったです。ありがとうございます。


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MC. 去年の12月にイタリアで開催されたミラノ国際映画祭で、心くんは最優秀主演男優賞、ジャッキー・ウー監督は最優秀監督賞のW受賞、おめでとうございます。受賞された時のお気持ちをお聞かせください。


ウー監督  心くんとは撮影の時にも「海外に届くような映画にしようね」って約束してて。フィードバックするのが普通の子役というよりも、しっかりとした役者さんのフィードバックになったので、「これは海外に挑戦できるかな」と思いました。ノミネートの一報を聞いて、本当に嬉しかったです。


寺田 本当に「イタリアに行く」ということだけを聞いていたので、とてもドキドキしたし、頂いた時は本当に感謝だなって思いました。監督さんにも感謝だし、僕のことを綺麗に撮ってくださる皆さんにも感謝だし、僕のことを応援してくださる皆さんにも感謝だし、事務所の方にも感謝だし、やっぱり、家族……祖母、母、犬のことも感謝だな、と思いました(場内笑)。


MC. 今回『ばあばは、だいじょうぶ』の原作を映画化しようと思った経緯をお聞かせくださいますか?


ウー監督 前回マドリード(国際映画祭)で鈴木紗理奈さんに(最優秀外国映画主演女優)賞を頂いて、海外の方から「とにかく次の映画が観たい」という新しいオファーが来まして。今回は海外のリクエストに応えるために、自分なりに色んな物語を、またスタッフをチョイスして一から作り上げたというのが、この映画が出来る経緯ですね。


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MC. 前作(『キセキの手紙』)で鈴木紗理奈さんが主演女優賞を受賞された監督の最新作での主演が決まった時の気持ちを聞かせていただけますか?


寺田 本当に、とっても嬉しかったです。東京でオーディションさせていただいて、その後、名古屋に帰り祖母のお家で連絡を待っていたんですけど、そしたらマネージャーさんから「受かったよ!」って言ってくださって……それが、とっても嬉しかったです。


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MC. 優しかった「ばあば」がどんどん変わっていってしまって戸惑う「翼」役を演じられました。とても難しい役だったと思いますが、役作りは大変でしたか?監督からアドバイスはありましたか?


寺田 ばあば(冨士眞奈美)に最初にお会いした時に「ばあばって呼んで良いですか?」って言ったら、「良いわよ」って言ってギュッてしてくださったり。監督さんからのアドバイスは……これ、何回も言ってるんですけど……「秘密の台本」を教えていただくと、とってもお芝居が楽しくなります。


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MC. この作品では、今までの心くんとは違う役者の顔が観られた気がしましたが、監督ならではの引き出し方があるのでは?


ウー監督 本当に、子役というよりも日本を代表する役者だと思うほどフィードバックがあったので、そういう部分に関しては何の戸惑いもなく。色んな映画を作りながら、僕は思うんですけど、自分が思い描いてた画とあまり合わない時があるんですよね。心くんがその画に入ってくれると、僕が考えてた以上に綺麗なシーンが撮れるので、本当に心揺さぶられるシーンは心くんが作ってくれたかなって思いますし、心くんじゃなかったらこういう賞を獲れなかったんじゃないかなという思いがあります。だから、本当に心くんに感謝ですね。


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MC. 大先輩である冨士さんと初の共演で、印象に残ったことはありますか?


寺田 本当にいつも ばあば は優しくて。「いつもいっぱい遊んでくれる……優しいなぁ」と思ってたんですけど、ばあば が ばあば じゃなくなるシーンがあって、それが本当に「ばあば、大丈夫?」って思うけど、カットって掛かるといつもの優しい ばあば だから……「はぁ、凄いなぁ」って、思いました。


MC. 2年連続して海外の国際映画祭において2人の日本人俳優に最高の賞を受賞させたということで、雑誌などで「受賞請負人」と紹介されていますが、秘訣などほんの一部でもお聞かせいただけないでしょうか?


ウー監督 その「ほんの一部」を話してしまうと、僕の仕事が失くなってしまうと思うんで(場内笑)、なかなか喋れないんですけど……ただ、映画を作らせていただいて、僕が海外で凄く感じることというのは、いくら日本語で凄くエモーションを、感情を込めて台詞を入れたとしても、お客様の目線が字幕スーパーに行ってしまう悲しさをずっと体験しまして。そうか、外国で公開すると、日本の映画だけど外国語映画になるんだな……日本語で喋ってますので英語の字幕だったりするんですけど、どんな良い演技をしても、どんな観客も字幕に目が行くんだということを、自分の中で感じて。演者として悲しい思いをしたことがあるので、僕が作る映画では役者にそういう思いをさせたくないなという思いで。字幕から戻ってくるまで残す思いというものを、ポイントポイントで入れたというか。あれ、結構言っちゃいましたね(場内笑)。


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MC. 最後に一言お願いします。


ウー監督 僕はあまり「病気」と呼びたくないんですが、こういう「出来事」というのは、今後身近に起こることがあると思います。悲しい思い、辛い思い、切ない思い、そして苦しい思い……自分の中でも、色んな部分で目を背けたり……。でも、やはり最後は両目で見届けて、しっかりと手を差し伸べて歩んでいくのが家族ではないのかなと、そう思っております。老いたら赤ちゃんになるということでは、決して無いと思います。だけど、その事実をしっかりと受け止めるのは、家族であっていただきたいなと思う気持ちで作りました。どうもありがとうございます。


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ジャッキー・ウー監督の思いをしっかりと受け止め、十二分にフィードバックした俳優たちの熱演を、是非とも劇場で――。


映画『ばあばは、だいじょうぶ』

2018年/98分/シネマスコープ/5.1ch 

配給:イオンエンターテイメント/エレファントハウス


映画『ばあばは、だいじょうぶ』公式サイト

https://grandmaisokay.com/sp/