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国内の映画祭を震撼させ、サンフランシスコ、ロンドン、チェコと海外でも招待、上映が続く「怪物映画」、下向拓生監督『センターライン』(2018年/67分)の一般公開が、いよいよ間近に迫ってきた。
4月6日(土)〜 シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町)
4月20日(土)〜 シネマ・ロサ(東京都豊島区西池袋)
『センターライン』ストーリー
地方検察庁に勤務する新人検察官・米子天々音(吉見茉莉奈)は、着任早々上長に詰めよる。刑事部だけを希望し長年努力を積み重ねていた彼女にとって、交通部への配属は承服できない事態なのだ。
時は平成39年、社会生活全般にAI(人工知能)が浸透する時代。自動車の運転もAIによる完全自動運転(限定的レベル5:全ての場所でシステムが全てを操作。但し、緊急時は運転者が操作)が普及していた。
天々音は、車同士の正面衝突による死亡事故で、運転を制御していた人工知能のMACO2(Motorcar Autonomous Control Operator ver.2)を過失致死罪で起訴する。
前代未聞の裁判の最中、MACO2の驚くべき供述により、事件は思いもよらぬ展開となる。人工知能に、感情は、心はあるのか?それを立証し、裁くことが、果たして出来るのであろうか――。
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AIは産みの母を夢に描くか? 下向拓生監督『センターライン』レビュー
シネマスコーレでの公開まで、あと1週間を切った。
【ゴチソー尾張】では、出演者・星能豊にインタビューする僥倖を得た。
主人公である新人検察官・米子の配属先の先輩でありながら、検察事務官という部下でもある大鳥役を演じきった「役者・星能豊」の、素顔に迫った――。
Q. 新聞記事で読みましたが、洋服店で働いたことが、一つの「人生の契機」だったとか。今までご覧になった映画で、ファッションが印象的な作品はありましたか?
星能豊 最近見た、『We Margiela マルジェラとわたし』(監督:メンナ・ラウラ・メイール)もそうなんですが、映画から影響を受けることは多いです。ファッションも音楽も。北村道子さん(石川県出身)が衣裳で関わっている映画が好きです。「衣裳術」という本も好きです。
Q. てっきり洋画の劇映画が挙がるかと思ってましたが、意外です。
星能 みんなSNSに観た映画の感想とか投稿するじゃないですか?その感想とか上手に表現してるなぁって見てます。僕、ほとんどしないんで、映画観に行ってないと思われることが多いんですが、それなりに観には行ってます。最近は、『グリーンブック』(監督:ピーター・ファレリー)や『翔んで埼玉』(監督:武内英樹)なども観ました。言葉が出ないから、言葉で表現できないから物書きじゃなくて、役者を続けてるんだと思います。しかも、役者は答えがないですよね。自分で良いと思ったテイクが使われないときもあれば、気に入らなかったテイクが使われるときもありますし。SNSでじゃなくて、飲みながら映画の話をしてる時が好きです。
Q. 星能さんは、どんな役作りをするんですか?
星能 与えられた役を自分ももちろん作り上げてしっかり準備をしていきますが、相手役が、どういう仕掛け方で来るのかってのを最近は考え、悩み、楽しむようにしてます。
Q. 『ピンぼけシティライツ』(監督:東海林毅)、『かぞくわり』(監督:塩崎祥平)、そして『センターライン』……星能さんの役どころは、どこかチャランポランなキャラクターが多いように感じます。普段の星能さんはとても真面目な印象なんですが、役とのギャップに悩むことはないですか?
星能 悩みまくりです(笑)。冗談半分本気半分ですが、基本いただいた役には自分なりにいろいろなアプローチで寄せていくんですが、わざと狙ってやったことに対して「あれ、普段の時と同じで演技してなくない?」なんて言われると、考えてやってるのに!と思ったりします(笑)。でも、そういう風に見えるのもありかなと思うときもあります。撮影終わると、よくしゃべりますし、ふざけたりもしてます。そのギャップがよくてお仕事をいただくこともあります。何度かお酒を交わせば、真面目な印象なのか否か変わってくるかもしれませんね。ギャップがあるほうが面白い場合もあるので、悩むときもあれば楽しんでる場合もあります。
Q. 『センターライン』では勤務中に六法全書で筋トレする姿(検察事務官大鳥役)が印象的でした。あれは、脚本のト書きにあったんですか?それとも、星能さんの役作りで?
星能 筋トレをするのはいただいた脚本に既にありました。その場で 「六法全書も使いましょう」と、MACO2役の上山輝さんのアイディアです。
Q. 下向監督の撮影は、現場でアイディアが出てくることが多いんですか?
星能 取り調べシーンで、大鳥がMACO2を椅子に座らせるんですが、米子検事(吉見茉莉奈)に「(MACO2が)見えない」と言われて、米子検事のネームプレートをパーンと手でどかしてMACO2をテーブルに乗せる場面。あと、スプレーを持って米子検事が出て行くときに、ボソッと「スプレーいる?」って独り言を言う場面。監督によってはアドリブを嫌う方もいますが、下向監督はけっこう自由にさせてくださいました。その場のアドリブでやったことが下向監督にウケて、そのまま使ってる場面もあります。
Q. 大鳥事務官は、演じやすい役でしたか?
星能 検察事務官、やるとは思ってなかったですし、専門用語多いので難しかったです。基本、器用じゃないのでどんな役をいただいても難しいです。毎回、新しい役に挑戦できること、そしてその難しさと向き合うことが、演じることを飽きずに続けていられる今があると思います。
Q. 大鳥が事務官として勤務する交通課は、「自動運転が普及した為、平成39年は極端な閑職になっている」という設定が、凄く奮っていました。星能さんから見て、下向作品で印象に残った世界観はありますか?
星能 大鳥を演じるにあたって、下向監督の世界観というよりは嗜好を僕なりにイメージの共有も含めて情報収集していたのですが、下向監督が普段観てる映画やドラマなどは、僕はほとんど観てないんです。全く趣味が合わないと思います。だからこそ、前作『N.O.A.』にしても、下向監督から発したものは全て新鮮で、作品を描こうとする際に撮影のジュンペイ(JUNPEI SUZUKI)さんと『◯◯みたいな感じで』とか好きな映画などのシーンやイメージを伝えているときの楽しんでる感が現場でとてもよかったです。出来上がった作品を観て、下向監督にしか出来ないものを作りあげたんだなあと思いました。その『◯◯みたいな感じで』とか自分はほとんど知らない作品でしたし、覚えてないですけど(笑)。
Q. 平成39年が舞台の『センターライン』において、星能さん演じる大鳥は「ゆとり世代」という設定で、配属されたばかりの新人に「これだから、ゆとりは」と面と向かって言われるシーンがあります。お芝居とはいえ、如何でしたか?
星能 違和感ありまくりです(笑)。別に公表してないわけじゃないですけど、僕は「ゆとり世代」じゃないので。ああいうことを年下に言われたら、ゆとり世代とか抜きにして、どう思うかということを自分なりに捉えてお芝居したつもりです。ゆとり世代というこの劇中での記号……情報は、他にも下向監督の脚本や演出で所々でてきますので。ゆとり世代っぽいということをそこまで意識すると逆にあざとくなるので、あんまり気にせずお芝居してました。
Q. 大鳥のチャームポイントを教えてください。また、それはどんなシーンで観られますか?
星能 やっぱり 基本は 何もしたくないところじゃないですかね(笑)。定時に帰れる静かな部署にあんなに暑苦しい人が来ますからね(笑)。だから基本的には「残業代出ますか?」とか、極力仕事したくないのは劇中でたくさん観れます。
Q. 星能さんが一番好きなシーンは?
星能 これから観ていただく方にはネタバレになってしまうので、あまり言えません(笑)。印象的なシーンで言うと、カーチェイスとか緊迫感もあって、いいなと。でもやっぱり、みんなMACO2という機械に向かって話をしたり、演技をしたりというのがスクリーンで観ても、実際の撮影現場でも面白く映りますね。
Q. 『センターライン』のジャンルは、何だと思いますか?
星能 観る人それぞれが異なる感じ方をするのは間違いない映画なので、ジャンルを超えた映画です。……ふざけてませんよ(笑)。
Q. 今後、深見蘭子役の望月めいりさんにもインタビューする予定なんです。望月さんに、何か一言。
星能 質問になってしまいますが……女優のみならず、ダンサーや振り付け師としても表現活動をされている望月さん、今回の役作りでの取り組み方や、女優として表現することとダンサーとして踊ることで表現することそれぞれの違いや楽しみかたを教えてほしいです。
Q. それでは最後に、これから『センターライン』を観るお客様に、一言お願いします。
星能 紆余曲折ありましたが、やっと念願の劇場公開となりました。映画を観ることが未来を観ることに繋がる。『センターライン』はそんな映画だと思います。下向監督の好きな世界観を贅沢に詰め込んだ作品でもあります。その世界で繰り広げられる素晴らしい物語、楽しく新しい映画体験になると思います。ぜひ、ご高覧いただきましたら幸いです。
「紆余曲折」とは、きっと『センターライン』完成までの道程の話だけではないのだ。
星能の、否、すべてのキャスト陣の、役者人生……
撮影に、制作に関わったスタッフ達の、映画人生……
映画を観る者の、人生……
そのすべてが投影されるからこそ、『センターライン』は「未来を観ることに繋が」り、「新しい映画体験になる」のだ。
フィルムでも、DVDでも良い。
アナログでも、デジタルでも良い。
記録という名の「過去」を映し出す銀幕は、今日も光明という名の「未来」を、観客に示し続けているのだ。
映画館とは、そういう空間なのだ――。
映画『センターライン』
【出演】
吉見茉莉奈 星能豊 倉橋健
望月めいり 上山輝
中嶋政彦 一色秀貴 近藤淳 青木謙樹 松本高士
もりとみ舞 一髙由佳 青木泰代 いば正人 藤原未砂希
【スタッフ】
監督・脚本:下向拓生
撮影監督:JUNPEI SUZUKI
セカンドカメラ:山川智輝/村瀬裕志
録音:上山輝/木村翔/上道裕太
小道具:木村翔/上道裕太/上山莉央
演出補助:山川智輝
法律監修:弁護士 鈴木成公
音楽:山口いさお(ISAo.)
主題歌:「シンギュラリティ・ブルース」小野優樹
ロケーション協力:いちのみやフィルムコミッション協議会/愛知県あま市企画政策課
2018年/67分
© 2019 Takumi SHIMOMUKAI
『センターライン』公式サイト
https://centerline2027.wixsite.com/centerline2027
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