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映画『21世紀の女の子』とは、21世紀に生きる15名の「映画の女の子」たちが織りなす、星座のようなオムニバス映画。

8分以内の短編のテーマは、「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」。


『おとぎ話みたい』(2014年/51分)『溺れるナイフ』(2016年/111分)の山戸結希が企画・プロデュースを手掛けた「21世紀の女の子の、女の子による、女の子のための、映画」に手を挙げたのは、井樫彩、枝優花、加藤綾佳、坂本ユカリ、首藤凜、竹内里紗、夏都愛未、東佳苗、ふくだももこ、松本花奈、安川有果、山中瑶子という、錚々たる「映画の女の子」たち。
ここに公募枠で選出された金子由里奈、アニメーションを担当する玉川桜が加わり、そして山戸結希自らも監督として参加し、15本の短編映画は117分のオムニバス作品を成した。


全国でロードショー公開真っ最中の『21世紀の女の子』は、3月29日(金)より刈谷日劇(刈谷市御幸町)での上映が始まる。

刈谷市出身の山戸監督にとって、また隣接する大府市出身で『君のシーツ』(監督:井樫彩)出演の清水くるみにとって、凱旋上映となる。


3月10日(日)【ええじゃないか とよはし映画祭】にて『21世紀の女の子』が上映された際、上映後のトークを取材することが出来た。

山戸結希監督、そして『reborn』(監督:坂本ユカリ)主演の松井玲奈が登壇し、穂の国とよはし芸術劇場PLAT(豊橋市西小田原町)に集まった観客は大きな拍手で迎えた。


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MC. お二人は、第1回の【とよはし映画祭】で初めて出会ったとか?(映画パーソナリティ 松岡ひとみ)


松井玲奈 そうです。


山戸結希監督 その時お会いした印象が凄く強く残っていて。今回『21世紀の女の子』で沢山の主演の女優さんがいらっしゃるんですけど、やっと……「やっと」と言うか、あっという間でしたよね。


松井 そうですね。あっという間に過ぎたという感じでした。


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MC. 松井さん、「山戸監督の作品に出たい」って仰ってたような?


松井 言ってました。山戸さんの作品は、凄く詩的でもあり、綺麗でもあって。空気感、撮影の仕方、見せ方……『溺れるナイフ』を観た時、私は好きだなって思っていたので、山戸さんと何かしらお仕事が出来たら嬉しいなと思ってた時に、『21世紀の女の子』の話があったんです。「これは!」ということで、オーディションを受けに行きました。


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MC. そもそもの作品製作の経緯は?


山戸監督 自分自身は、監督として日本で撮らせていただいています。この20年でメジャー映画を撮った女性の監督は、3%らしいんですね。その圧倒的なジェンダーギャップに対して出来ること、若手の新人監督の時代から思っていたことですが、トライ&エラーしながら何か出来ると良いなと思って立ち上げた企画です。私自身、愛知県にいる頃から「何かしてみたいな」って思っていて、映画を撮って凄く凄く楽しかったので、若い方、後進の世代の方が一人でも出られると良いと思ってました。今回は、監督が10人くらい並ぶ中に、女優さんがたった一人で囲まれる……そんなオーディションないじゃないですか。しかも、女の子の監督が10人以上ズラッと。女優さんといえど、皆さん動じられてたんですけど、坂本(ユカリ)監督が言ってて凄く印象的だったんですが、「松井さんは席に着かれた時に、皆のことを一回ちゃんと自分の目で見て、お話しされ始めた」って。私も確かにそれは凄く印象に残っていたんですが、あれはどんな思いで?


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松井 本当に女性監督が並んでいて、そこに一人……10対1の状態って、本当に中々なくて。このお一人お一人に、私は今から人間性を試される……と思ったら、怖くなって(笑)。多くの人に向けて喋る時は、皆を見て、皆に伝えなきゃ伝わらないと思ったので、そういう気持ちで。聞かれたことに対しても、聞いた方を中心に色んな方に「伝われっ!」みたいな気持ちで……「私のこの「映画に出たい!」って気持ちが伝われっ!」「誰か、私を拾ってくれ!」みたいな気持ちで、やってました(笑)。


山戸監督 オーディションでは1シーンを演じていただいたんですが、質問が出る限りその場でどんどんお話してって感じでした。絨毯を敷いた普通の会議室だったんですけど、ステージみたいでした。松井さんが、ステージみたいにして……私たちも、ある種試されてるんだなと凄く感じたんです。そういう松井さんの持ってる異質さは、普通の方には絶対に持ち得ないものなので、その「異質な女の子」っていうところが『reborn』には凄く繋がっている。坂本監督が凄く強く(松井さんを)希望されたっていうのは、凄く納得感がありますね。


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MC. 坂本監督は、山戸監督の後輩でしたっけ?


山戸監督 一緒に上智映画研究会で作っていた、今回の中だと唯一長い付き合いの方ですね。


MC. それで、松井さんを選んだ気持ちが良く分かる訳ですね?


山戸監督 やっぱり違うなと思いました(笑)。


MC. 監督を選ばれるのも、大変だったのでは?


山戸監督 『projection』を撮られた金子由里奈監督は、「監督をしてみたい」という200人の女の子の応募を頂きまして、マニュフェストと過去の映像が素晴らしかったので、お願いすることになりました。


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MC. 松井さん、お気に入りの作品は?


松井 面白かったのは、『恋愛乾燥剤』(監督:枝優花)が凄いポップで、可愛らしいなって思いました。試写室で観てた時、山田杏奈ちゃんが映った瞬間「なんだ、この可愛い子はッ!?」って、ちょっとぶっ飛んで(笑)。作品としても凄く好きですし、目も幸せでしたね。


MC. エンディングの曲が、凄く素敵ですね?


山戸監督 大森靖子さん feat. 平賀さち枝さんですね。


松井 私は大森靖子ちゃんのことが凄い好きだったので、これも試写の時に観ていて……エンドロールがアニメーションというのは知ってたんですけど、知ってる人の声が聴こえてきて!自分が出ている作品で好きなアーティストさんの曲が掛かるってことは夢の一つでもあったので、それが思ってもない状態で……知らない所からボンッて降ってきたので、エンドロールを観ながら大号泣をして(笑)。「ああ、夢が一つ叶った!」って。山戸さんと一緒にお仕事をしたいという強い気持ちで参加した作品で、大森靖子ちゃんの曲が掛かるっていうのも、凄く意味があるものだと思って。とても参加出来て良かったと思った瞬間でした。


山戸監督 松井さんが来てくださったのは0号試写なので、情報が全く……他の方が何を撮ってたかも、まだ出てなかったかもしれないんですけど、その状態で観て、声だけでというのは、よほど(好き)なんですよね。


MC. 作品の順番は、どのように決めたんですか?


山戸監督 劇場国内版は、私が一人で並べさせていただきました。東京国際映画祭や海外での上映機会のインターナショナル版という、皆で並び替えたものも存在してます。


松井 私はインターナショナル版を観ていたので、今日もちょこっと裏で観てたんですけど、「あ、並びが違う!」って凄く新鮮でしたね。


山戸監督 色んな観点の違いとか、構成の差はあるんですけど……地域を越えていくことが海外版の目的だとしたら、国内版に関しては「時間を越えて残っていくもの」という縦軸のイメージで並べたという違いがあるかもしれないですね。


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MC. 作品と作品の間のイラストも、可愛いですよね。


山戸監督 皆、ちょっと似てるんですよね。「自分、恐竜かぁ」とか、皆後で思ったと思います。元々独立したイラストがあって、私がプロデューサー権限で勝手に(笑)。色んな話をしてきたんですが、動物のイラストに関しては今はじめて指摘していただけたんです。誰にも伝わってない拘りなんじゃないかと、今までずっとちょっと悩んでたんで、嬉しいです(場内笑)。


MC. 坂本監督の時は、何でしたっけ?


松井 私もちゃんと覚えてないですね……


MC. もう一度観ないといけませんね(笑)。


山戸監督 可愛い感じにしたと思います。猫か犬だったかと?


松井 そうだ、犬でした!坂本監督はとても可愛らしい印象もあるんですけど、実直で真っ直ぐという……『reborn』を撮影している時も、かなり自分の思いが投影されてる作品なんだと感じていました。ラストのシーンはたまたま天候で雨が降っていたんですけど、その中で「どうしよう」って考えて、当日ちょっと演出も変えながらの撮影で、監督はずぶ濡れになりながら、ぐちゃぐちゃでインクが読めなくなった台本で指示を出してて……そういう状況でも、如何に作品を自分の思う方向に向かって進めていくかという気持ちが、凄く伝わってきました。カメラマンさんや音響さん達スタッフさんチーム全体が、一丸になって作っていく「現場感」というのを改めて感じることが出来て、とても参加できて良かったと、その日の帰りにしみじみ思いました。


山戸監督 『reborn』を観て、「よくぞ、この松井さんを撮ったな!」って、友達だから凄く感じてしまいました。お会いすると分かるものの、まだフィクションで撮られていない色々な面があると思うんですけど、その中でも確実に松井さんの「直筆」な美しさを撮られていて。他の主演女優さんもいらっしゃる中で、観終わった時に松井さんの美しさが残る……本当に、彼女にとっても運命的な結びつきだったと思います。元々多作というよりは寡作な方なんですけど、『reborn』で凄く彼女の中でも手応えがあったみたいで、もう次作の撮影に入られてます。


MC. 「つながり」って、素晴らしいですね。


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山戸監督 今日のトークで初めて『恋愛乾燥剤』がお好きだったと知ったので……松井玲奈さんと山田杏奈ちゃんの姉妹物語なんて(場内笑)。


松井 妹にかなり執着してて、妹がお姉ちゃんに独占されてて……みたいな役とかも良いなぁと思います。もう、すぐ出来ると思いますね(場内笑)。


山戸監督 そういう風に松井さんはしっかり言葉にするように、女の子が女の子に惹かれる部分って、だんだん社会的にも認められてると思うんです。そういう愛情をもっと表現していきたいと、話をしてて凄く思いました。女の子が集まると、ギスギスとかじゃなくて純粋に愛し合うことも出来て……そこから生まれる物語とか、芸術があるなって。


MC. 主題歌は是非、大森靖子さんにお願いして(笑)。


山戸監督 原案は、松井さんで。


松井 やったぁ!「原案」に名前が載るんですね?


山戸監督 原案・主演で(笑)。初めてお会いした【とよはし映画祭】で、「長編を撮るのは大変だけど、短編ならチャレンジしやすい」って確か壇上で松井さん仰られてたんですよね。今でも覚えてる言葉なので、それが無意識につながって『21世紀の女の子』に出ていただけた……「つながり」を感じます。


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MC. 最後に一言、お願いします。


山戸監督 15本、観る方によってどの作品が一番好きか凄く分かれるので、周りの人とお話しする切っ掛けに楽しんでいただけたら、凄く幸いです。ありがとうございます。


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『21世紀の女の子』、刈谷日劇では3月29日(金)から4月18日(木)までの上映予定。

3月29日から4月4日までは、連日①14:40〜②19:30〜というスケジュールとなっている。


幻を越えよう……あなたがこの世界にいる限り――。


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映画『21世紀の女の子』公式サイト

http://21st-century-girl.com


刈谷日劇公式サイト

http://kariyanichigeki.com