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昨年20周年を迎えた劇団「前方公演墳」の演目『セブンガールズ』は、2004年の初演から熱狂的な支持を集め、4度の再演を重ねた作品だ。

映画『セブンガールズ』は、そんな人気作の劇場映画版である。


『セブンガールズ』ストーリー

誰も負けるなんて思っていなかった戦争が終わったばかりの1946年、東京・有楽町。

希望を失い、尊厳を踏み躙られた焼け野原に、「涙なんか使い捨てだよ」と笑顔を振りまく娼婦——パンパンガール達がいた。


恋人・成瀬(小野寺隆一)を待ち侘びる、真知(坂崎愛)。

声を失った妹を養う、猫(堀川果奈)。

頼れるリーダー、あさひ(河原幸子)。

優しさを隠す蓮っ葉、コノ(藤井直子)。

重大な秘密を抱える、マリア(斉藤和希)。

義理固いナンバーワン、道絵(樋口真衣)。

客が取れない娼婦、郁子(広田あきほ)。

お嬢様育ちの、愛理(斉藤みかん)。

手段を選ばない新人、ミチル(上田奈々)。


彼女たちの歌が、バラック建ての小屋に、瓦礫の町に鳴り響く時、人々の、そして自らの涙を吹き飛ばす——。


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1月26日(土)、名古屋シネマテーク(名古屋市千種区今池)で公開初日を迎えた映画『セブンガールズ』のスクリーン前に、デビッド・宮原監督、坂崎愛、小野寺隆一が舞台挨拶に立った。


小野寺隆一 成瀬凛太朗役を演じました、小野寺隆一です。本日はご来場いただきまして、本当にありがとうございました(場内拍手)。ご存知の方もいらっしゃるかもしれないんですが、僕たちは劇団をやっておりまして、20年間ずっと東京の下北沢という街を中心に演劇をやってきました。長くやっていると色々なお客様も着いてくださるんですけど、東海地方に住んでらっしゃるお客様もいて、僕たちが舞台をやると名古屋から、三重から東京まで来て、舞台を観てくれるんです。終わった後に「いつも遠くからありがとうございます」と挨拶をすると、「いつか、名古屋で舞台やってくださいね!」って毎回毎回言われて、心を痛めていました。映画を作ることで、こうして名古屋に来ることが出来ました。1週間だけですが上映は続きますので、どんな感想でも良いです、「面白かった」だけでなく、「大した映画じゃないよ」でも良いです。少し映画の話をする機会があったら、「こんな映画があるよ」と一言伝えていただけると嬉しいです。


坂崎愛 真知をやらせていただきました、坂崎愛です。本日はご来場いただきまして、ありがとうございました(場内拍手)。こんなに沢山の方に観に来ていただいたことが凄く嬉しくて、感動してます……ありがとうございます。さっき、美味しいあんかけパスタを食べてきました(笑)。客席でカメラを構えている猫ちゃん役のエミちゃん(堀川果奈)と夜行バスに乗って今朝名古屋に着いて、こちらにいる姉の家でゆっくりして、お昼にあんかけスパを食べて……凄く楽しく今の時間まで過ごしてきたんですが、こうやって皆さんの前に立って『セブンガールズ』が名古屋で上映されたんだと思うと(涙声)……あぁ、もう泣いちゃう(場内笑)。凄く感動してます。私たちはずっと東京で活動してきてましたので、名古屋でどれくらいお客さんが入ってくれるのかと心配なところもあったんですが……こうして観に来てくださって、本当にありがとうございます。この『セブンガールズ』は広告費も無いですし、自分たちの力で広めていこうとしてるんですけど、凄く良い作品だと自信を持ってお届けしてます。もし共感していただいた方がいらっしゃいましたら、身近な人に「『セブンガールズ』っていう映画があるんだよ」って伝えていただければ、凄く嬉しいです。本当に、今日はありがとうございました。


デビッド・宮原監督 監督をさせていただきました、デビッド・宮原と申します。今日は、ご来場ありがとうございました(場内拍手)。3分しか話せないところをもう3分話されて、僕はほとんど喋ることがなくなってしまいました(笑)。さっき、味噌煮込みうどんを食べてきました(場内笑)。「食べ方が違う」と、さっき教わりました……蓋で食べるって、初めて聞きました。それが、凄く悔まれます。本当に小さな小さな映画で、去年の9月に新宿(K's cinema)で始まりまして……まさか、名古屋のシネマテークさんに来れるとは思ってもいませんでしたので、とても嬉しい限りです。小さな映画、たった5日間で撮った映画ですけど、関係者の方にも「絶対無理だ!」「馬鹿じゃないか?」って言われながら……でも、運良く僕ら馬鹿だったので、何とか乗り切って作ることが出来ました。粗いところも沢山あるんですけど、少しずつ、地道に観ていただいて、一日でも長く上映されるように願っています。本当に拙い映画ですけど、どうぞ応援のほど宜しくお願い致します。


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舞台挨拶後に開催されたサイン会は、凄まじい盛り上がりを見せた。

サインに並んだ列の長さは言わずもがなだが、観客一人一人が投げかける質問、感想の熱量が凄まじく、ロビーの人垣はいつ消えるかも分からず笑顔での歓談が続いた。


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サイン会終了後、再度コメントを頂く機会に恵まれた。


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Q. 普通、舞台の映画化というと出演者の方が変わることもあります。そこをオリジナルキャストにしたことの意義は?


宮原監督 僕たちの映画にしたかった、というのが一つあります。こんな小さい劇団が世の中に出て行くことが出来るとしたら、どこまで出来るんだろうというチャレンジもありました。この作品を大手のところに掛けて、配給会社さんと相談して、キャストは2〜3人でも有名な人が入れば、色んなものが違ったと思います。でも、ハードルは高かったんですけど、そこでやるよりもっと挑戦が出来るんだったら、自分たちでやってみたいという思いが強かったんです。この作品は、予算も少なかったです。「この予算だと、5日しか(撮影)期間は取れない」と言われた時、だったらその前に出来るだけ作り込もうと思ったんですが、そうなると役者のスケジュールを押さえることになります。入念に演出をして、カメラを決めて……例えば長回しをするというとカメラの方が動くのが普通だと思うんですけど、それをやる時間もなかったですし。ならば、カメラをなるべく動かさず、役者をどうやって動かすか……多分、それで「舞台っぽい」と言われるんだと思うんですよね。


Q. 舞台っぽい、ライブっぽい雰囲気も凄く出てたと思います。


宮原監督 基本はワンテイク(一発撮り)って決めていました。芝居が何かおかしかったり、技術的におかしいことがない場合は、全部OKして。多少のトラブルは日常にありえることなので、全部入れていこうと思ってました。役者の方は「もう一回!」っていうところもあったとは思いますが(笑)。カメラは2台で回してましたので、自分の方で編集できると思ったら、全部OKしてましたね。まあ、実際編集してみて、厳しいところもあったんですけど(笑)、5日で撮るにはそういうチャレンジも必要かと思って。


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Q. 舞台版と比べて「映画版はここを観てほしい」のは、どこですか?


宮原監督 やっぱり舞台で表現できないのは、心情なんですね。絶対に寄れないので。ですから、そこは観てほしいです。台詞量がとても多いので、そこは舞台と変わらないところかもしれないんですけど、表情だけは絶対に舞台とは違いますから、そこに関しては凄く拘りました。舞台ではクローズアップしてないところをクローズアップにしてるので、多分そこは舞台を観てる人にとっては違うところだと思っています。


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坂崎 舞台だと外のシーンが多いので、朝や夜の家の中の場面は、舞台では描かれなかったシーンなんです。娼婦たちの日常、中身の部分が映画では現れているので、そういったところも見所だと思います。あと、私は映画になる前の舞台では猫の役で、映画になるに当たって真知になったんです。結構時間がなかったので、猫の気持ちから真知という人間になるというのは、凄く苦労したところです。未練があったので、猫に対して。でも今では、真知を演じさせてもらって凄く良かったと思っています。


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小野寺 大昔のクラシックな映画には「大部屋」というのがあって、沢山の役者さんが一緒に共同生活をしていて、その映画会社の映画にしか出れないという時代があって……その時代の日本映画は、世界でも凄く評価されたという感覚があるんです。今そういう「大部屋」みたいなものっていうのは、恐らく日本だと劇団なんじゃないかと思っていて。僕たち20年間ずっと一緒にいるので、ちょっとトチッても、パッとカバー出来る……そういう阿吽の呼吸というものがあったからこそ出来上がった映画です。もし映画を観てくれる人がいたら、そんな息の合ったところを観ていただいて、「これは、この人たちじゃないと作れない映画だぞ」というところを見付けてほしいと思います。


また、27日(日)の舞台挨拶に登壇予定の堀川果奈、そしてご友人に付き添って観客席にいた斉藤和希、出演者のお二人からもコメントを頂くことが出来た。


斉藤和希(マリア役) 舞台とは違いまして、映画は目の動きだけで表現できる部分があります。私たちは体で表現してしまいすぎるところがあったので、映像用のお芝居を5日間でスムーズに撮るために、長い時間を掛けて稽古しました。大勢のキャストが出演する盛り沢山な物語になってますが、一人一人丁寧に愛情を込めて役を演じていますので、細かい表情をご覧いただけたらと思います。


堀川果奈(猫役) 個人的に一番思いが入っているのが、エンドロールの最後のシーンなんですね。あそこは凄く好きなシーンなので、エンドロールが流れると帰ってしまう方もいらっしゃると思うんですけど、最後の最後まで観ていただけたら……伝わるんじゃないかなと思ってます、この映画の全てが。


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『セブンガールズ』、名古屋シネマテークでは2月1日(金)まで、連日13時より上映される。


セブンガールズ……それは、サバイバーのナンバーだ。

時代背景が違えど、現代を生きる私たちがこんなにまで笑って泣けるのは、いつだって人が業を背負った存在だからなのかもしれない。

生き延びる、という業を——。


映画『セブンガールズ』オフィシャルサイト

http://sevengirls.info


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