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人生でいちばん最後に食べるものって、何になるんだろう——?


2018年10月27日(土)、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町)は舞台挨拶ラッシュで、レイトショーまで多くの映画ファンが観客席を埋め続けた。


「3年ぶりですね……シネマスコーレに帰ってきました!」


『いつも月夜に米の飯』(2018年/104分)初日舞台挨拶に駆けつけた加藤綾佳監督は、笑顔で登壇した。


『いつも月夜に米の飯』ストーリー

とある都内の高校の昼休み、千代里(山田愛奈)に届けられたのは、疎遠になっている母・麗子(高橋由美子)が失踪したとの知らせだった。

急報を受け数年ぶりに地元・新潟へ帰ってきた千代里が母の居酒屋「伊呂利」で出会ったのは、店に取り残された雇われ料理人のアサダ(和田聰宏)だった——。


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MC. 『いつも月夜に米の飯』は、オール新潟ロケなんですよね?(シネマスコーレ 坪井篤史副支配人)


加藤綾佳監督 主演の山田愛奈さんも私も、新潟県出身なんです。「山田愛奈さん主演で映画を」という企画がSPOTTED PRODUCTIONSに上がってきた時に、「新潟出身の監督がいるよ」と紹介されまして。今から2年以上前なんですけど、いちばん最初に山田愛奈さんにお会いした時は、本当はご本人が女優志望じゃなかったらしくて……ブスッとしてるような感じで(笑)。後々聞いたら、本当は映画とかも出たくなくて、わざとブスッとしてたらしいんです。でも、私はその感じを凄く気に入ってしまって(笑)、「よろしくお願いします!」みたいな子よりも、大したもんだと思ったんです。私はずっとご飯を作るのも食べるのも好きなので、「ご飯もの」がやりたかったんですよ。新潟と言ったらご飯だろうなというのもありまして。山田愛奈さんにお会いする時に、いちばん最初「どんな人ですか?」と聞いたら、「おにぎりが好きな子」って(笑)……そこも含めての、今回のキャラクターです。


MC. 撮影は、2017年でしたっけ?


加藤監督 そうです。ちょうど、去年の5月に撮影してました。地元の方も好意的で、凄く撮影はやりやすかったです。舞台となった居酒屋は、私が子供の頃から連れてってもらっていたお店なんです。学校のシーンも、実は新潟です。撮影は順撮りに近くて、最初のシーンから撮って、最後のエンドロール後のシーンでクランクアップだったんですけど、山田さんの表情も最初と最後で全然違っていて、自然に変わっていくのが見ていて楽しかったですね。アサダ役の和田聰宏さんにも、自然に馴染んでいった感じでした。


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MC. 和田さんが素晴らしすぎて……男性が見てても、「抱かれてもいい」って思うくらいの(場内笑)。


加藤監督 もう私も、「抱かれてもいい」くらいに思ってたんです(笑)。


MC. 和田さんは、元々料理が出来たんですか?


加藤監督 凄くお上手で、料理のシーンも全部吹き替え無しだったんです。初めてお会いした時に「料理は得意です」って仰ったんですけど、自分で得意って言う方は本当に上手いので(笑)。撮休の時にスタッフが現場の居酒屋にいたら、和田さんが「みんな飯どうするの?」って聞かれて、山田愛奈さんを連れてスーパーで食材を買ってきて、調理場で作ってご飯を振る舞ってくれて。


MC. 映画そのままじゃないですか(笑)!和田さんのキャスティングは、監督後自身で?


加藤監督 そうです。結構、熱烈に。好評な意見もあれば、「イラッとする」っていう20代の女子もいたり……意見は分かれましたね(笑)。


MC. チャプターが料理だったのも印象的でした。


加藤監督 前に短編映画でそういうのをやったことがあって、今回は直井(卓俊プロデューサー)さんが「あれ良かったよね」って言ってくださったのもあったんで、早い段階からメニューでチャプターを分けるのは面白いかなと思っていました。今グルメドラマが多いですけど、2〜30分で1つの料理といった尺も掛けられないので……だったら料理を作ることで千代里も成長していく方向に出来ないかと思って、色々メニューを考えたんです。


MC. 『おんなのこきらい』(2014年/80分)でもそうでしたが、加藤さんの作品はけっこう食が重要ですもんね。


加藤監督 そうですね、キーになるシーンは食が絡んだりすることが多いですかね。


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MC. 単なるハッピーエンドに向かうと思ったら、思いもよらぬ凄い展開でしたけど(笑)?


加藤監督 この話を考える時、1つ「食」というテーマがあったんですけど……いちばん最初に結婚式のシーンをやりたいというところがあったんです。居酒屋で女子高生が女将をやって成長していくという、分かりやすいヒューマンドラマなんですけど……突き抜けました(笑)。愛奈さんと話したり、私も新潟に帰って撮影して心境の変化があったのか、シナリオに無かった場面が生まれたりもしました。「田舎は、ただ綺麗なものではないよ」っていうのがあって、新潟の人はこの映画を観てどうだろうと思ったんですけど……「閉塞感であるとか、ちょっと寂しい感じとか、凄く新潟の空気感だった」とか「新潟の人が撮った映画だと思った」って言ってもらえたりして、ホッとしました。


MC. 東京では、どうでした?


加藤監督 東京がいちばん意見が割れたかと思います。SNSで「ホラーだ!」って書かれたり、「振り返った山田愛奈ちゃんに、狂気すら感じる」と(笑)。


MC. 高橋由美子さんも良かったです。


加藤監督 千代里が持ち得ていない可愛さを持つキャラクターを、凄く表現していただけたと思います。


MC. 何か告知はありますか?


加藤監督 一昨日(10月25日)レッドカーペットを歩いた(東京国際映画祭)んですけど、山戸結希監督プロデュースの『21世紀の女の子』というオムニバス作品に参加させていただいてまして、来春くらいに公開予定となります。あと、私ちょうど今、東海テレビさんのドラマ『7人の夫』のシナリオを書いておりまして……しかも『映画MANIA』(坪井副支配人出演)の前番組なんです(場内笑)。毎週木曜24時25分から、【劇団ヘラクレスの掟】の主演で、お笑い芸人のゆいP(おかずクラブ)さんに7人の夫がいるという面白い設定のドラマです(笑)。ちょうど11月1日放送の3話は私の脚本で、今後もやる回があるのでご注目いただけたら嬉しいです。


MC. 加藤さんはオリジナルの企画が多いですが、今後やりたい作品はありますか?


加藤監督 女性を撮ることが多いので、全然違うテイストの……童貞男子とか、凄く泥臭いドラマもやりたいです(笑)。


MC. 最後に一言、お願いします。


加藤監督 この映画を観ていただいて、お一人お一人が、「一回一回の食って大事だな」とか「美味しいな」とか「好きな人と食べて嬉しいな」とか、そんな風に思ってもらえたら嬉しいなと思います。今日は本当にありがとうございました(場内拍手)。


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トーク終了後、サイン会場では鮭、梅入りのおにぎり2種と、新潟の地酒「菅名岳」の大吟醸が販売された。

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サインに並ぶ観客のほとんどが、調理師免許を持つ監督自身が「舞台挨拶の2分前まで握っていた」というおにぎりに手を伸ばし、あっという間に完売となった。


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今作に出演した角替和枝さんが亡くなられたとの、あまりに悲しい急報が届いた。

シネマスコーレ『いつも月夜に米の飯』公開初日は、図らずも角替さんの命日となった。


居酒屋「伊呂利」の常連役で大きな存在感を示した角替和枝さんに、是非とも劇場へ会いに行っていただきたいと願う。


映画は、監督の想いは、役者の演技は、いつも同じようにそこに在り続ける。


10月27日シネマスコーレを後にした人々を照らした、月のように——。


映画『いつも月夜に米の飯』公式サイト

http://itsukome.com