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2018年8月4日(土)、『スカブロ』(監督:矢城潤一/2018年/101分)のシネマスコーレ(名古屋市中村区椿町)初日舞台挨拶を取材した。

矢城潤一監督 本日は劇場まで足をお運びいただき、本当にありがとうございます。監督の矢城(やぎ)と申します。

矢城監督 『スカブロ』は横須賀発の映画です。4〜5年前だったか、横須賀の人口流出が日本一になったということがありました。それまで横須賀の人達は、あまり自分の街にネガティブな発想を持っていなかったんですけれど、そんなニュースが流れた途端に「え、何……俺達の街って、そんなに魅力が無いの?」って、焦り出しまして。僕もそれまで、横須賀の映画というのは考えてはなかったんですが、映画で横須賀の魅力、熱さが表現できないかと思って、ここまで仲間と5年を掛けて辿り着きました。

矢城監督 数日前に名古屋も40℃越え……物凄く暑いというニュースが流れましたけど、地元を愛する気持ちの熱さで負けてないという気持ちで『スカブロ』をこちらに持ってきました。その辺を感じていただけたら良いなと思っております。

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『スカブロ』ストーリー

撮影現場で監督と揉めた、売れない俳優・海野龍助(窪塚俊介)。数年ぶりに横須賀に帰郷し、弟・虎太(RUEED)と再会する。虎太の彼女・美咲(福永マリカ)の取りなしもあって、徐々にぎこちない空気が薄れていく兄弟。龍助は滞在中、虎太の仕事を手伝うことになった。横須賀でストリートミュージシャンをしている虎太は、数年前に龍助と始めた便利業『SUKEDACHIYA』をまだ続けていた。
次の日の早朝、便利屋の仕事で小学生にサーフィンを教える海野兄弟は、若い女性・ナオミ(AISHA)と出会う。ナオミは、横須賀ベースの元軍人と日本人シンガーのヨーコとの間に産まれたハーフ。亡くなった父親の遺言を果たすため、はるばるロサンゼルスから横須賀へやって来たのだ。
タイムリミットは、一週間。ナオミの願いを叶えることはできるのか?横須賀(スカ)兄弟(bro)コンビが、横須賀を駆け回る――。


上映後、矢城潤一監督は、一献しながらお話を伺う機会を設けてくれた。

矢城監督 ファーストシーン、実は『スカブロ』と同じく横須賀を舞台にした名作、今村昌平監督の『豚と軍艦』(1961年/108分)のオマージュなんですよ。

矢城監督 窪塚俊介さん、RUEEDの兄弟はじめ、出演者は全体の60%が横須賀に係わる人たちなんです。そこに、矢城組常連の役者さんが加わった形で、凄くバランスの取れたキャスティングだと思ってます。

矢城監督 扮装が凝ってたから分かりにくいですが、窪塚洋介さんも出てたことに気づきました?洋介、俊介、RUEEDと、一瞬ですが同フレームに兄弟揃い踏みするんです。

矢城監督 マックス役は、外人の役者さんを起用することも考えたんですが、どうもイメージと違って……何というか、僕の中でマックスは「妖精」みたいな存在にしたかったんです。最後○○を遅らせたのも、実は彼の仕業なのかも……なんて(笑)。

矢城監督 昔の「プログラム・ピクチャー」のような、どんな人でも楽しめる映画にしたかったんです。小学生の子を連れたお母さんが、「この子が「もう一回『スカブロ』観たい!」って言うので、また来ました」って声を掛けてくれたのは、本当に嬉しかったですね。何度観ても楽しめるように……実は『スカブロ』は一度観ただけでは分からないような小ネタをいっぱい仕込んであるんです。散歩の仕事で連れてる犬の名前がボブではなく「ボム」なのは、実は爆発物探知犬で……あんな行動を取ったのは、△△に反応したからだった、とか(笑)。

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食事会がお開きになった後も、少しだけお話を聞くことが出来た。

Q. 「一番観てほしい」と思うシーンは、どこでしょう?

矢城監督 バーで“対決”するシーンです。地元感あふれる、「何か良い雰囲気の場所」が好きなんです。物語とは関係ないかもしれないんですけど、素敵なシーンになってると思ってます。横須賀、地元愛で成立した映画なので、そんな思いが伝わると良いなと思っています。

Q. キャスティングで苦労した点は?

矢城監督 さっきも話に出ましたが、マックス役を外国人でやるのか……自分の中で、最後まで決められなかったキャスティングですね。ただ、最終的にはボブ鈴木さんのマックスで良かったと思ってます。

Q. 撮影で苦労したことは?

矢城監督 大概、撮影って苦労するんですよ、どのシーンも(笑)。美術としては、飾り込みや、何もない駐車場で設営した「カレー」のシーンなんかは大変だったと思いますけど……監督としては、特に思い付かないですね……全部苦労してるので(笑)。劇中で兄弟が乗るダットラは、ギリギリまで……本当にギリギリまで車検が通らなかったですし、天候には悩まされましたし。11月に撮ってるんですが、寒くて皆んな風邪をひいたり……映画には映ってませんが、横須賀には滅多に降らない雪まで降ったんです。

Q. おしなべて、苦労の連続だったんですね。

矢城監督 地元で撮るって、やっぱりプレッシャーじゃないですか。クランクインまでに3年半〜4年くらい掛かってますし、撮影の前段階の方が苦労は多かったかもしれないですね。資金集め、キャスティング……もう、「“撮る撮る詐欺”じゃないか?」なんて言われて(笑)。映画を撮ると言うと、普通の人はすぐ撮るんだろうと思い込んでますし。それがあったんで、(クランク)インしてからはスッキリしたと言うか……ここまで来れば、無理矢理でも何でも映画を作ることが出来る!って(笑)。

Q. 撮影期間は何日くらいだったんですか?

矢城監督 最初は3週間……21日くらいで組んでたんですけど、最終的にはプラス3日くらいになりました。

Q. 音楽に凄くこだわりを感じました。

矢城監督 監督として、僕はあんまり映像の段階で「こういう音楽が良いな」って思わないタイプなんです。逆に「この画でどういう音楽を付けてくれる?」って感じで。昨日、音楽家(小林洋平)と話したんですけど、「最初に台本を読んだ段階では、フュージョン系をイメージしてた」って言ってましたね。でも、上がった画を観て「映像とガッツリ勝負するような音楽にしよう」って思ったって。それは、正解だったんじゃないかと思います。

名古屋の暑さと同じく……否、負けないくらい、『スカブロ』は熱い。
そして、そんな熱さは、まだまだ終わらない――。

映画『スカブロ』公式サイト