2018年6月9日(土)、ゴチソー尾張はまたまた国許を離れ、美濃に遠征した。
この日、岐阜県図書館(岐阜県岐阜市宇佐)では、ご存知【MKE(エムケーイー)映画祭】が開催されたのだ。
「みてくれたっていいじゃない」の頭文字を取って名付けられたご当地映画祭も今年で第6回を迎え、すっかり美濃に初夏を告げる風物詩となった。
全国より応募された20分以内の短編映画の中から厳選された16作品が上映され、14作品の監督・俳優・制作陣が岐阜を訪れ、舞台に登壇した。
『インスタントカメラ』(2017年/15分)
鈴江誉志監督 この作品は、大学1年生の終わりの頃に思いついた作品です。その頃、僕の大学で出来た友達が大学を辞めてしまったり、自分が大学生活に馴染めずにいて、過去を振り返りながら生きている感じでした。ちょうどその頃に使い捨てカメラを持ちはじめて、「友達って何だろう?」とか、「限りあるものって何だろう?」と考えた時、思いついた作品でした。自分の胸の中にある、微かな優しい、温かい記憶を胸に、前を向いて歩いていこうとする姿を描こうと、この作品を作りました。こうして自分の作った作品の上映機会を頂いて、普通に過ごしていたら出会うことのなかった人だったり、踏み入れるはずのなかった場所に連れてきていただいていることを、凄くありがたく思っています。
『眠れない夜に』(2017年/5分)
山川智輝監督 今日は、観ていただいて本当にありがとうございます。この作品は、僕がお酒や不眠に関する印象的な写真を幾つか見たこととか、路上やお酒の席で酔っ払ってた人たちにインスパイアされて作りました。僕は岐阜出身で、今も岐阜に住んでるんですけど……岐阜感ゼロですけど、撮影場所は大垣です。演出面に関して、「もうちょっと気持ちよさそうに寝てほしい」とか、「もう少し羨ましそうな顔してほしい」とか、そういうことは言ってたんですけど、後半の長回しのシーンは細かい演出はせず、役者に自由にやってもらいました。カメラは自分が回してるんですけど、細かく動きとかは決めず、比較的自由に撮影してます。
『Cで失神』(監督:平野正和/2017年/10分)
『叙々苑に行こう』(2017年/8分)
加藤雅大監督 何もかも初めて撮った作品です。一人で何にも分からず作ったんですけど、所々で上映していただいたり、観てもらって、ちょっとでも伝わるものが1mmでもあれば良いなと思います。
『田吾作どんのいる村』(2016年/20分)
猪浦直樹監督 この作品は、新潟県内で春夏秋冬1年間撮影を致しまして、地元の人から農具や服などを寄付していただき、作りました。録音、整音は、岐阜出身の臼井(勝)さんです。撮影は、『舞妓はレディ』(監督:周防正行/2014年)などを担当したプロのカメラマン(寺田緑郎)で、春夏秋を撮った段階で亡くなってしまいまして、これが遺作という形になっております。
加藤大輔(主演) 最初に台本をもらった時、台詞が全くないんですよね。ど素人の僕に、こんなの出来るんだろうか?って、凄く不安だったんですけど……今観ても「こうすれば良かったな」という点も一杯あるんですが、スタッフの方がとても素晴らしくて、何より舞台である新潟の自然が凄く美しくて、そこに自分を重ねていけば良いだけだったので、何とか作品に出来たのかなと思ってます。ストーリーは凄くシンプルなんですけど、皆さんも何か感じていただければ……「田吾作的な何か」は皆さんの周りにきっといると思いますので、そんな気持ちをもう一度思い起こしていただければと思います。
『私とわたし』(2017年/5分)
佃尚能監督 主演の大須は、岐阜市出身ということで……
大須みづほ(主演) 岐阜“県”出身です。不破郡垂井町です。
佃監督 済みません(笑)。ともかく、ようやく岐阜で上映できましたね。
大須 はい。ずっと岐阜で上映したいなと思っていたので、本当に、本当に、嬉しいです(場内拍手)。
佃監督 一人八役……如何でしたか?
大須 撮る毎にヘアメイクも衣装も全部変えなきゃいけないので、撮ってる時間よりも着替えてる時間が多いんじゃないかってくらいで……大変でしたね。でも、凄く楽しかったです。2日間で撮りました……ハードスケジュールで。いつか、岐阜ロケで映画を撮りたいなと、今凄く思ってます。
『アパートメントコンプレックス』(2018年/17分)
山村もみ夫。監督 監督と……あと、テーマソングを歌ったりしています(笑)。「いのちの重さ」をテーマに今回作ってみたのが、『アパートメントコンプレックス』という作品だったんですけど(場内笑)……そのテーマまで、きちんと読み取っていただけたお客様が何人くらいいらっしゃるか分かりませんが、伝われば良いなという思いで、今日は岐阜まで来ました(場内笑)。ちなみに、最後に蛇足感がありましたが……北海道に招待していただいた時に作って、後からくっ付けたんです。……要らんかったかな、とも思いますが(場内笑)。でも、「北海道民あるある」だったので、向こうではウケました(笑)。
『いのちの価値は』(2017年/5分)
森元諒監督 真面目そうなタイトルから、ちょっと悪ふざけみたいな映画なんですけど……あまり真面目じゃないので、深い意味を考えずに観ていただけたら嬉しいです。実は僕、山村監督のファンでして……【YAMATO映画祭】で作品を観て、面白かったので。その山村監督のすぐ後に自分の作品が流されるのは、非常に光栄です。
『ベルガマスク』(2017年/10分)
島田力規王監督 日本大学芸術学部映画学科から来ました、島田力規王(しまだ りきおう)と申します。初めて作った映画なんですが、有名な監督たちが最初にゾンビ映画を作ることが多いとのことで、僕も将来有名になるならゾンビ映画を撮った方が良いかと思いまして(笑)。色々と調べて、セオリーに則って撮った作品です。
『カップケーキ』(監督:張大尉(ジャン・ダーウェイ)/2018年/15分)
荒井智晴プロデューサー この作品は、日本と中国の合作映画になります。監督の張大尉は、私が中国に留学していた時に知り合った同期なんですけど、ずっと「いつかもう少し能力を高めたら、一緒に作品を作りたいね」という話をしていて、ようやく去年の段階で動きはじめたんです。監督は今28歳ですけど、それくらいの世代の人は大体日本の文化が大好きで、特にサブカルの分野に影響を受けてる方が多いんです。監督が大好きな『エヴァンゲリオン』や『ドラえもん』をモチーフにキャラクタ造型を取り組みまして、この作品が出来上がりました。この作品には別のエンディングもありまして、もう少し長いバージョンもあるんです。どうしてもこの映画祭に出したかったもので、少しショート・バージョンにするにはあそこで切るしかなかったという苦渋の選択ではあるんですが、楽しんでいただけたなら本当に嬉しいです。
『二者択一』(2018年/9分)
名倉健郎監督 今僕たちは、四文字熟語をテーマに短編のシリーズを作ってまして、その中の1作品となっております。
守山龍之介(主演) 『二者択一』は、本当にこれからの季節にぴったりの作品かと思います(場内笑)。男としての葛藤と言いますか、そんなことを分かっていただけたらと思うんですが……今年スイカを食べた時に、どちらかの女性を思い出していただければと思います(笑)。
『動物大怪獣コアラ』(2018年/2分)
佃光監督 「ちゃんとしてない方の佃監督」です(場内笑)。
篠崎雅美(出演) 最後に爆笑が起こって、本当に良かったです(笑)。今日は、佃尚能監督がいらっしゃって……珍しいお名前の監督が同じ会場内にいらっしゃって、個人的に興奮をしております。
名倉監督 ……どうしてコアラなの(場内笑)?
佃監督 あれ?高畑勲監督の『コアラココアラ』って映画を知らんです(場内大笑)?
『CRYING BITCH』(監督:津野励木/2017年/15分)
春園幸宏プロデューサー タクシードライバー役で、出演もしています(笑)。元々私は映画好きで、観る方ばかりだったんですけど、ホラーが好きで映画を作りたくなって、作ったのがこの作品です。私以外は、全員プロです……お金も掛かりました(場内笑)。佐伯(日菜子)さんも、私が口説きました。今日は、監督も佐伯さんも本当は「来たい」って言ってたんですけど、仕事の都合が着かなくて申し訳ありません。笑ってほしいところで笑っていただいて、嬉しかったです。日本の映画祭だと、中々そうはいかないもので……監督がアメリカや韓国に行くと、笑ってほしいところで物凄く笑ってくれるらしいんですね。今日はそういう笑いが起きたんで、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。
『犯人はセーラー服』(2016年/4分)
繁田健治監督 僕の周りで、セーラー服というのを高校生の制服全般と混同してる方が多くて、そのことを説明すると大体怒られるんですよね、「俺はマニアじゃない!」って。「繁田、一つ利口にしてくれた」とは誰も言わないんですね(場内笑)。僕は、凄くストレスが溜まるんです。警察は、目撃者が「セーラー服が犯人だ」と言った時、捜査はどうするのか?セーラー服ピンポイントで絞り込むのか、制服全般を見るのか……警察は区別が着いてるのか?そんなことを考えました。大事なのは、それを何も調べないで作ったんです。Yahoo知恵袋とかに出すと、答えが出ちゃうんですよね。そうすると作らなくても良くなっちゃうんで。僕の映画に出たいという女性はほとんどいないんですが、最近「娘の制服を映画に出してくれ」と言われることが多くて……そういう声には、応えなきゃいけないんですよね(場内笑)。服というのは掛かっていても唯の布切れなので、中に素敵な人が入っていただかないと……と言うことで、出演していただきました。
津田菜都美(出演) ひたすら恥ずかしかったです(場内笑)。監督が今おっしゃったように、制服は監督の拘りで……撮影自体は、お芝居をしてる時間よりも、着替えてる時間の方が多かったですよね。私も女優の活動をしてて色々な作品に出させていただいてるんですけど、こういう作品は初めてだったので、凄く楽しかったです。思いの外アップが多くて、恥ずかしかったんですけど、あのシーンで皆さんにインパクトが残ってもらってると良いかなと思います。
『なぎさ』(監督:古川原壮志/2017年/18分)
『LABEL』(2016年/8分)
小林立依監督 私はオーストラリアのシドニーに2年前までいて、大学院に通って映像を専攻していました。この作品は、大学院の卒業制作で撮ることになった作品です。キャストはローカルのオーストラリア人ばかりで、スタッフは留学生や現地の人たちに手伝っていただいて、日本人は私だけでした。ただ、日本ではクラウドファンディングのプロジェクトもやっていて、日本でたくさん手助けをしてくれたスタッフもいるので、エンドロールには多くの日本人の名前が載っています。とても思い入れのある、楽しい作品でした。誰かを判断する時、決め付けてしまったりして、ミスコミュニケーションを起こしてしまうことがあります。それは、私がオーストラリアにいた時に、英語を使ってコミュニケーションを取ることが上手く行かなかった時にも、沢山あって。そのせいで、私もミスジャッジされたくない……そんな気持ちで、この作品を作りました。
以上、16作品に観客からは惜しみない拍手が贈られた。
【MKE映画祭】は、観客からの投票によってグランプリ作品が決定する。
投票用紙を集計している間、会場では協賛店・企業からの豪華賞品を賭けての大ジャンケン大会が行われた。
お客様ではなく監督がジャンケンに勝ってしまうハプニング(?)もあり、客席は大盛り上がりとなった。
グランプリの前に各賞が贈賞されたのであるが、ここに当映画祭の最大の特徴がある。
MKE映画祭は、作品だけでなく、各部門賞も一般公募している、世にも珍しい映画祭である。
プレゼンターになったなら、好きに名前を付けた賞を自由に設定できるし、受賞作品・人物も自身で選出できるのだ。
【第6回 MKE映画祭】では、グランプリの他に9つの部門賞が設けられた。
【いつかこの映画を思い出しきっと笑ってしまう賞】
『CRYING BITCH』
【最優秀新人賞】
『ベルガマスク』島田力規王監督
【STEP賞】
『アパートメントコンプレックス』
【TAEKO賞】
『動物大怪獣コアラ』
佃光監督 (有限会社)ステップ様に頂いた賞ということで、これを機に、ホップ……
篠崎雅美 ステップ……
佃監督 ジャーンプ(場内拍手)!
【君こそプリンセスブルーだ!女優賞】
『私とわたし』大須みづほ
【プリンセスブルーの生存作戦大賞】
『カップケーキ』
【ブレイクスルー賞】
『LABEL』
【隆盛(りゅうせい)賞】
『私とわたし』
【Director of Directors賞】
『犯人はセーラー服』繁田健治監督
【第6回 MKE映画祭グランプリ】
『私とわたし』
佃尚能監督 スタッフ、キャスト、皆にしっかりこの喜びを伝えたいと思います。本当に、ありがとうございました。
佃尚能監督『私とわたし』は、【グランプリ】【隆盛賞】【女優賞】の三冠を獲得した。
授賞式が終わり、お馴染みの入場者全員による記念写真で【第6回 MKE映画祭】が幕を閉じると、会場を移し懇親会が執り行われた。
懇親会が二次会に突入する頃、『私とわたし』グランプリ女優・大須みづほが映画祭に戻ってきた。
大須は祝い事があって離れていたとのことで、めでたいことは続くものだ。
しかも彼女が「エビちゃん」役で出演中の『恋愛依存症の女』(監督:木村聡志/2018年/199分)が公開の真っ最中。めでたいことは重なるものだ。
【MKE映画祭】の終わりは、いつも自由解散となる。
ここは、岐阜……美濃の国。
楽市楽座、発祥の地なのだから――。
【MKE映画祭】公式HP
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